<ほんあんです>+ほとんど、そうさくにちかくなってきました…。

【お隣のちっちゃな妹】 ( げんさく:は、某外国の方です。 )


 スティーブ、誘惑される




ローラが、スティーブに相談をしてから…1週間。

ティムの妹・リナは、ちょうどローラの席の真後ろにいる幸運をかみしめていた。自分の席は、休み時間だけでなく、授業中ですら、ローラとその隣のスティーブのことまで、じっくり監視できる‘最高’の場所だった。
そして、ある自習時間に、スティーブがなにかのメモをローラにそっと投げていたのを、リナは見逃さなかった。

先生のいない、軽いざわめきの中で、ローラはそのメモを取り出した。軽く左右を見渡し、誰も見ていないことを確かめる。
そして、〜リナのさりげない観察には気がつかないまま〜そのメモにじっと見入ったあと、そのままノートに眼を落とす。…が、さっきよりペースが落ちていた。

リナは、ローラがメモを読む前と後では、わずかにだが、うきうきした、しかしそわそわと落ち着かない態度になったのを見逃してはいなかった。

授業は終わり、休み時間に。

スティーブは、ローラに軽くウインクして教室を出ていく。その後、スティーブはずっと「飛び級」の授業で、その日は終わり、という時間割だった。

そしてローラは、出て行くスティーブに、ややこわばった笑顔を見せると、次の授業の準備を始めた。

リナはメモの所在がとても気になったが、我慢して観察を続けた。と、突然ローラが立ち上がる。

そして、ごく何気ない態度を装いながら、教室の隅にあるゴミ箱に向かったと思うと、さっきのメモを捨て、小走りに廊下に出て行く。

ローラが完全に見えなくなったあとも、しばらく戻ってこないのを確認した後、リナはゴミを捨てるふりをして、ローラが捨てたメモをゴミ箱から回収し、そのまま女子トイレに向かう。

リナは、個室で一人きりになり、スティーブのメモをじっくり読み始めた。それは、スティーブの研究の成果だけではなく、ローラが何を期待していたのか、ということまでがわかる内容だった。




ローラへ

おかげさまで、ずいぶん研究は進んでるよ。
思い切って父さんに正直に打ち明けたら、GSのベータテストを2段階にして、ぼくのもいっしょにテストしてくれることになったんだ。
それで、ぼくの薬も、人に対する安全性が保証できそう、になってきた。おまけに…その効果については、父さんも母さんもすごく期待している。…ぼく自身、びっくりするくらいなんだ!

だから、その薬をきみに処方することはそう難しくない。そういう条件がそろってきてる、と思ってる。

でも実は…、ぼくはまだ父さんにも内緒にしてることが、ある。
そっちのほうが、きみの願いをもっともっとストレートに実現できる可能性が高い。…ぼくは、そう思っている。

ぼくの作った薬に、その人の血液中の成長因子を組み込むと、人間でも、おそらく数時間のうちにかなりの成長が見込めそうなんだ。…そう、文字通り、‘あっという間に’大きくなれるかもしれないんだ!

そのためには、ローラ、きみにも協力してもらう必要がある。

ほんのちょっとでいいから、きみの血液をぼくにくれないか? できるだけ、早いほうがうれしいな。
そしたら、きみが願っている‘少しでも早く、大きくなりたい’っていう希望を叶えてあげられるかもしれない。

そうだな、こんどの週末にでも、ぼくの父さんの研究室に来てくれれば、いいよ。…あ、そのときは、脱ぎ着しやすい服装でね。おっと、2〜3サイズ大きめのを、忘れずに!

 …ま、ぼくのスエットかトレーニングウエアでも、かまわないんだったら、お貸ししてもかまいませんけど?

スティより    ついしん:読後、廃棄のこと!  -Your Eyes Onlyだからね!-





…リナは、メモを読み終えた瞬間、ローラが動き出す前に、スティーブに「相談」すべきだ、と思った。それは今日以外ない。

きょうは、月曜日。
…おそらくローラは、今日はそのまま家に帰るだろう。スティーブは、「飛び級」の授業が終われば、また父親の研究室に向かうに違いない。

スティーブを捕まえるなら、3年生の授業が終わり、彼がテキストを自分のロッカーに戻しに来るワンチャンスを狙うしかない。
…運のいいことに、その時間なら、1年生の授業終了から優に1時間半は経っていて、クラブ活動をする生徒以外、だれも学校には残っていない。…絶好のチャンスだ。

あとは、どうやってスティーブに「相談」に乗ってもらうか、だが…
リナは、それほど心配は、していなかった。





原子の中にあるニュートリノと中間子の関係を、先生を含めたクラス全員に説明し、スティーブは、普段よりも‘ちょっと’頭を使って疲れていた。
しかし、ほんの1週間足らずで、思いがけない吉報をローラに伝えることができたので、この後も複雑で地道な実験をしに父親の研究室に行くのは、ふだんにも増して楽しく感じられていた。

そんなスティーブにとって、ロッカーの前で自分を待つ女の子がいたことは、なにか‘幸運の連鎖’のようなものに、自分が迎えられたように思えた瞬間だった。

しかも、その女の子が、あのティムの妹・リナだったことも、〜自分が迷信やジンクスといったものをさほど信じていないにしても〜‘偶然の一致’以上のものを感じていた。

…というのも、この直前、今日最後の物理が終わった時に、3年生の中でも特に親しいリックとティムから、こんなことを言われたからだ。

( いやぁ、スティ、こんなに物理が面白くてよくわかったのは初めてさ! 今度さ、うちの理科音痴の妹に、個人レッスンでもしてくれないか? )
( おいおい、リック、君んとこの妹はたしかクラスじゃスティの隣、毎日がレッスンみたいなモンだよ…それよりスティ、うちの小ずるい妹にもさ、宿題だけじゃなくて〜ローラ共々、迷惑かけてるのは聞いてるよ〜、さっきみたいな理科系の面白さ、みたいなのを教えてやってくれると、ね… )


そんなふうに思いを巡らしているスティーブに、ティムの妹が話しかける。…どうも、いつもと、かなり違う感じがする。

「…あの、スティーブ…ちょっと…いい?」
「や、やあ、リナ。な、なにかな?」
「あの…ちょっと相談が…あるんだけど…」
「ああ、いいよ、ぼくにできることであれば、なんでも!」
「…ほかの人には、ないしょに、してくれる?」

いつもクラスメートのいるところで、なんでもはっきり言うリナしか知らないスティーブとしては、ただでさえ、2人きりで話す、などという状況が彼の緊張をいやでも高めていた。

しかも、なにか秘密を打ち明けられているような雰囲気。これは、彼にとっては初めての体験だった。いつもとは違うスピードに心拍が跳ね上がるのを感じていた。

「…な、ないしょ? あ、ああ、もちろん。口は堅いから。」

スティーブの頭の中で、冷静なもう一人の自分が、考えを整理する。…もしかして、リックとティムが言ってた‘個人レッスン’のことか?
…どうも違うような気がする。…なんだろう?

「うふ、ありがとう。…あの、ね、スティーブ…あなたの…」
「う、うん、ぼくの…?」
「…いまやっている、大学での研究のことなんだけど…」
「え? あ、ああ、…君にも、話したっけ?」
「…ごめんなさい、聞くつもり、なかったんだけど、あなたとローラが話しているの、聞こえちゃったの…その…」

絶妙なタイミングで、リナは、す、と一歩前に進み出る。これで、スティーブのあごと自分の頭との‘隙間’は、もう30cmくらいしか、ない。
しかも、スティーブからは、第2ボタンまで開けたブラウスごしに、自慢の谷間が丸見えのはずだ…

「あ、そ、そうか、そうなんだ、せ、成長促進剤のこと? き、君、そ、そのことで、なにか…?」
「…あの、その…その薬、わたしが…使ってみたら…どうなるかな、って、思ったんだけど…」
「え? き、君が? …君みたいな、きれいで、グラマーなひと、が?」

ここで、リナはさらに、ほんの少し、スティーブとの‘隙間’を詰める。…身体はもう、ほとんど寄りかからんばかり。そして、なすすべなく、身体の両脇にぶらぶらしている彼の手を、ぎゅっと握りしめる。

「…でも、あなたの作った薬で、わたしは、もっと大きくなって、もっとグラマーに、なれるかも…。どう、かしら…?」
「あ…そ、そうか、そうだね、それは大いに可能性が…ある、かも…で、でも…そ、その…ま、まず…その、ろ、ローラと…」

スティーブの言葉の最後はリナの大胆な行為で尻切れトンボになってしまう…
彼女は、自分の頭を、スティーブの胸元にもたせかけると同時に、握りしめた両手を、そっと自分の胸元へ。
彼の手が、ふんわりと、柔らかく盛り上がる二つの膨らみを押しつぶす。

「…!」
「…どう? これが…もっと、もっと、大きくなれば…もっと、素敵に…」
「…い、いや、…あ、き、君なら、今でも、じゅ、じゅうぶん素敵だと…」

彼の心臓のドキドキ…どんどんピッチが上がっていく…。

胸元にもたせかけた耳に伝わる鼓動を感じながら、リナは、自分が作り出した最も効果的なタイミングを逃さない。…聞こえるかどうか、すれすれの、とっておきのささやきを、スティーブの耳に送り込む。

「…あなたの薬を使えば、きっとわたし…もっと“あなた”の背丈にふさわしい大きさと、“あなた”といたら周りがうらやましがる、素敵なプロポーションを持ったひとに…なれるかも。…そう、思いません?」

胸に押しつけたスティーブの手が、自分の手を、きゅ、と握り返して、くる。

…うまく、いった。

人形のように、かくかくとうなずきながら、「そ、そうだね、そ、それは、すごいアイデアだ… 」と、上ずった声でつぶやいている、スティーブ。

それを彼の胸元で見上げながら、ティムの‘小ずるい’妹は、どうしたら痛くないように、自分の血液をとれるのか…と、すでに、次のことを考えはじめていた。



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