おおきな、ロシアから来た留学生のおはなしのつづきが、きゃべったさんからとどきました。ありがとうございます。


【ロシアからの、留学生】 さく: きゃべったさん

 その4    2006.Sep.29



「修弥、さあ、ここだ。」
「……………」

待ち合わせ場所から徒歩10分。
ティーナに連れて来られた場所を見て、僕は言葉に詰まりました。

目の前にあるのは、無駄にキラキラと点滅する派手なネオンに彩られ、色々な音楽がごちゃ混ぜになって流れ出している、アミューズメント施設。

大型複合アミューズメント施設『Apio』

ここは駅前という立地条件の良さに加え、四階建ての建物にゲームセンターからボーリング場、
カラオケルームにバイキング形式のレストランまで揃っていて、一日中遊んでいられると評判の、市内では数少ないデートスポットの一つです。

確かに、普通のカップルがデートをする分には問題ないかもしれません。ですが…

「ティ、ティーナさん…本当にここでいいんですか?」

予想外の場所に、ついつい僕の声はちょっと不安気なものになってしまいます。

「ん? なんでも、この町で一番楽しいデートスポットと聞いたのだが…違うのか?」

さっきまでの自信に溢れていたティーナの表情が、急に曇りました。
まぁ、確かにデートスポットだというのはあってるんですが…

「いえ、それは合ってるんですが…その、ここは沢山人がいますから。
 こういう場所はティーナさん苦手なんじゃないかって思って…」

学校では僕と保険の先生以外の人とは殆ど話す姿を見せないティーナです。
…自分のその巨体にコンプレックスを感じているから、あまり人と関わるのを避けているのだ、と僕は思っていたのですが…

そんなことを考え、心配をする僕に、ティーナはとっても可愛らしい笑顔を向けてくれました。

「修弥、お前のおかげだぞ」
「え?」
「私は今まで自分の身体が嫌いだった。化け物と呼ばれるぐらい大きくて、周りの者が恐怖を感じてしまうこの身体が…。
そして、そんな私の身体に向けられる周りからの視線が…本当につらかった…。でも…」

突然ティーナは身を屈めてその太い右腕を僕の前に差し出すと、グッと曲げて力を込めました。
すると、タンクトップの肩口から窮屈そうにせり出し、ただでさえ僕の腕の何倍も太かった腕にみるみるうちに力瘤が盛り上がって、
うねるような筋肉によりその太さを増していきます。

とくん、とくん、とくんとくんとくん、とくとくとく…

…僕の胴体くらいの厚みを湛えていく彼女の上腕二頭筋と三頭筋…それを見て、僕の胸の鼓動が跳ね上がります。

日本で柔道を学ぶために来日したティーナですが、その規格外の巨体とパワーのために、
女子はもちろん、男子でさえ彼女の練習相手をつとめられる人間は誰一人いません。

そのため、放課後はとんでもない重量の器具が揃ったジムで毎日とってもハードなトレーニングをしています…





ある日、僕は彼女のトレーニングのようすを見学しに行ったことがあります。

僕がジムに入っていったとき、彼女は、はちきれんばかりに筋肉をパンプアップさせた肉体で、
沢山のプレートを取り付けたバーベルを肘を支点に上下させ、
今見せてもらっていた上腕二頭筋、いわゆる‘力瘤’の筋肉を鍛えていました。

ふと、僕はそのバーベルに付けてあったウェイトを見たのです…

(ふ〜ん。一枚50kgか…僕じゃ両腕でも2枚がいいとこかな…
 ええっと、…いち、にぃ、さん、しぃ、ご…片方に5枚…やっぱりスゴイな、ティーナさん…
 合わせて10枚かぁ…え? じゅ、じゅうまいぃ? …て、ことは…)

そうなんです。ティーナはなんと、500kgという、とんでもない重さになったウェイトを、
まるでダンベル運動でもするかのように、片腕だけで軽々と何度も持ち上げていました。

「ほら、んんっ、修弥、んっ、見てどうだ? んっ、この、んっ、私の、んんっ、トレーニング、んっ、方法は…」

しかも、軽く汗ばんでいるだけで、ぜんぜん息も上がっていません…

「…あ、あの…ティーナさん?」
「…? んんっ、 どうした、んんっ、修弥? んんっ」
「そ、それ、い、いつも何回くらいやってるんですか?」
「あ、ああ、んんっ、そうだな、んんっ、30回を、んんっ、5セットで、んんっ、ひゃくごーじゅう?、んんっ、というのか?」

休むことなく腕を曲げ伸ばししながら、無邪気に答えるティーナ。
…ふと気が付いて辺りを見回すと、ジムにいた、とてもマッチョな男性たちが全員、
自分のトレーニングを忘れて、彼女のすさまじい肉体美に見ほれているのでした…。




本気を出せばいったいどれだけの力を秘めているのか…想像もつかない逞しい腕が、僕の目の前に突き出されています。

軽く振るうだけで、僕の身体をまるで紙くずのように何mも吹っ飛ばしてしまうことが出来る、とんでもない豪腕。
それなのに…普通の人なら恐怖を覚える対象であるはずのその腕に、僕はうっとりと見惚れてしまいます。

改めて、僕はこの大きくて逞しい、だけど、ちょっとおっちょこちょいで優しくて可愛いティーナのことが大好きなんだと、感じることが出来ました。

そんな、ぼーっと見惚れてしまっている僕を見て、ティーナは少し頬を赤らめながら、僕の耳元に囁きかけます。

「…ふふふっ…そうやって修弥がこの身体を好きになってくれたから、私は自分の身体を誇らしく思えるようになったのだぞ…」

そして優しげな微笑を僕に向けると、ティーナは身体を起こしました。

そのゆっくりとした動きにあわせて、規格外の巨体の中でも一際巨大さが目立つ爆乳が、
黒いタンクトップの下で、ぶるぅんん、ぶるるんっ、と大暴れします。

「もう周りの者にどんな目で見られても、気にしないことにしたのだ。それどころか、
修弥のために、もっともっと大きく、そして逞しくなるつもりだからな」

グググッと胸を張りながらそう言い切ったティーナの目には、何の迷いもありません。

ぴぴっ! ぴりぴりぴりっ!

布が引きつれたような音がしました。ふと、その音のしたところを目で追うと、
それはティーナの巨大すぎる胸元からでした。
胸を張っただけで、彼女の大胸筋が猛烈にバンプアップし、タンクトップ
(といっても、その超爆乳が3分の1近くはみ出し、もはやチューブトップ状態)の裾からはみ出した肌色の膨らみを押し上げ、
ぶぅわぁん! とさらに膨張したのです。
かなり厚手のコットンでできていたにもかかわらず、その圧力に黒いタンクトップが引っぱられ…

「あああ! てぃ、ティーナさん! や、やぶけちゃう!」
「…ん? え?」

ぴりりり〜ぃっ!  「…き、きゃあっ!」

あわてて上体から力を抜き、タンクトップからこぼれ落ちそうになった大爆乳を両腕で抱え込み、
縮こまるティーナ。顔はゆでダコのように真っ赤になっています…

タンクトップの縫い目のいくつかが、まるでストッキングのように‘伝線’しかけていて、
その健康的な、途方もない膨らみがさらに目立つようになりました。

…あれ? そーいえば、なんだか、今までと違う、とっても女の子っぽい、悲鳴があがったような…

びっくりして彼女を見ると、小さくしゃがんだティーナと視線がほぼ同じ高さになっていました。

「…あは。ちょ、ちょっと、力を入れすぎたか?」

そう言うと彼女は、いたずらっぽく、ぺろん、と舌をだしておどけてくれました。

ほんとはとっても素直で、無邪気な(そして、実はおっちょこちょいな…)ティーナ。
僕にだけ、かもしれないけれど、強大すぎて無敵の留学生…という姿からは想像もつかない素顔を、少しずつ見せてくれて…。

その姿からは、大きすぎる身体による苦しみを全て吹っ切って、本当に自分の身体に自信を持ったのだということを感じさせます。

そんなティーナに、恋人である僕はどういう態度をとればいいのでしょうか?

僕は一瞬だけ思案してから、精一杯の笑顔を彼女に返しました。

「うん。そうだね、それじゃティーナさん、今日は一日ここで楽しみましょう!」

そしてティーナの大きな手を、ギュッと握り締めました。

ようやくその巨大な身体による呪縛から開放されたティーナに、普通の女の子として接してあげて、普通にデートをする…

それが恋人である僕が、ティーナにしてあげるべきことだと思ったのです。

予想もしていなかったのでしょう、そんな僕の積極的な行動に、ティーナの顔がまたまた可愛く真っ赤に染まります。

「ほら、ティーナさん早く早く!」
「あ、ああ…」

さっきまでの自信たっぷりの表情はどこへやら、一転純情な乙女のごとく照れだしたティーナ…。
その姿にクスッと微笑んでから、僕はティーナの手を引いて『Apio』へと入っていきました。



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