【香織と僕】その8
びしっ! びいん!
大きくなっていく香織の背中で、するどい金属音がした。すると、大きなトレーナーをさらに大きく膨らませていた胸のあたりが、ぶるぅん、と揺れ、さらに一段と盛り上がったように見えた。
いつの間にか、浅く呼吸を繰り返していた香織が、薄く目をあけて、こうつぶやく。
「…あ。ブラジャーが…こわれちゃった…」
おそらく、大きくなる身体にストラップや後ろのスナップが耐えきれず、引きちぎれてしまったらしい。その束縛から解き放たれたバストは、今やぼんやり突っ立っているぼくの目の前にあり、まだどんどん大きく、そしてさらに上に持ち上がっていく。すさまじい膨らみは、あまりにも大きくなっているために、ぼくは香織の顔を見るために、一二歩うしろに下がらないといけなくなっていた。
ロングトレーナーも、ひじょうに伸縮性の高い生地を使っているために、香織が大きくなるのに合わせ、上下左右にどんどん伸びていく。最初に見たときのゆとりはほとんどなく、その大きくなる一方の香織の巨体にぴったりと張り付いていく。しかも、すさまじい大きさに育っていく胸元に丈をどんどんとられていき、もともと膝近くにあった裾は、もはやミニスカートのように、太股を隠せるかどうか、というところまで持ち上がっている。そして、何十センチも飛び出した乳房の下にカーテンのように垂れ下がり、ふわふわと揺れていた。
ごつん。
天井にぶつかる、にぶい音がして、成長が止まる。…深く深呼吸する香織。
どのくらい時間が経っているのか…。ついさっきまでぼくと同じくらいだった香織は、天井にまでとどく大きさの美女に育っていた。
「…す、すごい。…すごく、素敵だ…」 そんな言葉が、思わずもれてしまう。
「…ね。ちっちゃくは、なれないんだけど…。(大きくなりたい!)って思うと、ほんとに、なれちゃうの…」
そういうと、彼女は、にっこり微笑んで、ぼくを見下ろした。…いつでも、元に戻れる、という見込みがあるのだろう、以前のように不安そうな表情はいっさい、ない。
なぜか、ついさっき言ったぼくの言葉が脳裏にリフレインする。
(正直いって、今だって…もしかすると、ぼくは…お、大きな香織が、好きなのかも知れない…。)
そのときの、香織の顔は、なぜか、一瞬ぱあっ、と明るくなったような気がする…。…そして、彼女は、自分の力を見せてくれた。…香織は、もしかして、ぼくのために、大きくなってくれたのか?
…そう思うと、なぜか心臓がどきどきしてくる。…自分の、ある意味、陰にかくされた心の中を、ここまではっきりと示され、しかも、それが今目の前に現実としてあらわれてしまった…。
ぼくの中で、この夢のような瞬間を、できるだけ楽しんでしまおう! という、ちょっとやけっぱちに近い気持ちが浮かんでくる。…こうなったら「毒を食らわば、皿まで」だ。
ぼくは、その大きな身体にふらふらと近づくと、その腰の辺りに抱きついてしまう。香織は一瞬驚いたように身体をよじったが、その反動で、巨大なバストがゆさゆさと揺れ動く。かまわずに、お腹のあたりにしがみつく。トレーナーの下にあるやわらかな肌。その下には、スポーツで鍛えたしなやかな腹筋が感じ取れる。それが呼吸に合わせ、ゆっくりと上下しているのがわかる。
そうしていると、大きな香織の手がぼくの背中をやさしくなでてくれる。ぼくの頭はちょうど彼女のオッパイの下辺りに潜り込むようなかっこうになっていた。大きな膨らみの重さが、頭の上にずっしりとのしかかってくる。そのすぐ下には、伸縮性に富むスポーツスパッツが、限界まで引き延ばされて、まるで薄いパンティのように巨大なお尻を包み込んでいた。
「…こんな、こんなに、大きくなって…ぼくは…そうなった香織が、もっと、もっと好きだ…」
ほとんど自分に言い聞かせるように、つぶやいた。その声が、香織に届いたのかどうか、わからなかった…
ごくり、とつばを飲み込むと、ぼくは、身体をそこから放し、巨大な胸の陰に出て、こう、香織に切り出した。
「…、こ、この大きくなった身体、どのくらいの大きさか、は、測ってみて…いい?」
「え? …あたしの…からだを?」
「…う、うん。…だめかな?」
「…ちょっと…恥ずかしい……けど、…いい。 あたしも、知りたい…」
<Graphs-Topへ> <<もくじへ <戻る つづく>