【香織と僕】その7


ぼくは顔から火が噴きそうだった。それは、自分の告白はもちろん、その間ずっとぼくのことを見つめている香織のいっしょうけんめいなまなざしに、とても恥ずかしくなったからだ。しかし、その香織の瞳は、涙がたまっているように、うるうると焦点を結ばずにいる。しかし、ぼくもそこから目を離せなくなっていた。

「…陽くん…。ありがとう。…うれしい…。」 かすかに聞こえた言葉とともに、頬に涙が伝わるのが見えた。
そういうと、彼女は立ち上がり、ぼくの右肩に頭をあずけ、ぼくに抱きついてくる。ぼくの胸に、その大きすぎる胸の膨らみがふっくらと押しつけられ、鼻先に、さらさらした彼女の髪がまとわりつく。

「あたしも…。陽くんのこと、とっても大好き。」 耳元でささやくような声が聞こえた。

きゅっ、彼女の腕がとぼくの首にしがみつく。そうすることで、その豊満な肉房の感触が、ぼくの胸にますます感じられるようになる。

「…で、でも…こんなのも…」 香織はそういうと、ちょっと体を離し、その大きすぎる胸を目をやる。
「…陽くん…好きだって、言ってくれる?」

急に、自分の下心を見透かされたような気がして、あわててしまう。

「え? …あ、ああ、そ、そうだね! うん、もちろん、ステキだよ! ええと、すごく、その…すごくエッチ…あの、ごめん! いや、その…ちょっと、その、ぼくがエッチすぎて…あの、その……ごめん。」
「……うふっ」

彼女は、ぼくのあわてぶりに、くすくす笑い始める。それで、ぼくの方もつられて笑い出す。…やっと、ぼくも自分の素直な気持ちを伝えることができたのかもしれない。今まではなんだか、こちらだけが空回りしていたような気がした。それまで緊張をしていた目に見えないなにかが、笑いと共にどんどん流されていく。

ひとしきり笑った後、気持ちがすごく軽くなって、ぼくも思わず彼女をきゅっと抱き寄せる。
心地よい柔らかな体全体が、トレーナーごしに感じられた。…彼女も、全身をリラックスさせて、身体を預けてくる。ぼくは、右肩から薫る、さらさらの髪の毛を感じながら、彼女の肩をやさしくなでていた。


それにしても、ぼくは、どうして彼女が‘縮んで’しまったのか、不思議だった。
そのギモンが、ぼくの顔にあらわれたのか、香織は頬を赤く染めながら話し出す。

「相談、って、この身体のことなんだけど…」  そう、香織は切り出した。

「あのとき、陽くんが帰って…ああ、やっぱり、おっきいと、いやがられるのか…こわがられちゃうのかな…って、思って、ちょっと悲しくて…。それで、ずっと(小さくなりたい。もとの大きさに戻りたい。)って考えてた…。そうしたら…」

「……」 こんどは、ぼくが、じっと聞き入る番だった。

「…からだが、どんどん縮んでいって…。ここまでになったの。…今は、174cm。大学に入ったときとおんなじ。これ以上はちっちゃくはならなかった。胸だって、こんなになって…そのままだし。
だれかに、相談したいけど・・・こんなの、だれも信じてくれないし、きっと、こわがられちゃう・・・。でも、陽くんなら、話してもわかってくれる…そう思った。だから、思い切って電話を…。そしたら…、すぐに来てくれて…すごく、うれしかった。」

「…いや、それは、ぼくも謝らなきゃ、いけないと思ったから…」
「うん。だから…、そんな陽くんが、もっともっと、うれしいって、思う…」

「いや、でも、…ごめん。」
「?」
「ホントのことをいうよ。…ほくは香織の大きな身体が、すごくエッチに見えたんだ。それで、本当に好きなのは、香織なのか、大きな身体なのか、どっちかわからなくなって…。正直いって、今だって…もしかすると、ぼくは…お、大きな香織が、好きなのかも知れない…。だから…」

「…じゃあ、…やっぱり…」

話している間中、じっとその大きな瞳で見つめられているので、こっちも頭がかあっとなっていく。と、彼女は目許をかすかに染めながら、ぽつり、とつぶやく。

「…おっきいのが、好き?」

首に回していた手をゆるめると、香織は、つ、とぼくから一歩離れる。つられて、ぼくも腕を放し、彼女を見た。香織は、目をつぶったまま、なにかに集中しているようだ。呼吸が深く、そしてだんだんテンポが速くなっていた。…そこで、気づく…やや見下ろしていたはずの彼女の額が、いま、目の前にあり、それがどんどん上に上がっていた。そして、そのすぐ下、とても大きな乳房の形が、みるみる前に突き出している。生地にプリントされたイラストや文字が、さらに膨らんでいく丸みにデフォルメされて大きくゆがんでいく。

「…ちっちゃく、なれるだけじゃ、なくて……こんな、ことも…できるの。」  目をつぶったまま、香織がつぶやく。

5分もたたないうちに、ぼくは、見上げないと彼女の顔を見られなくなっていた。すでにぼくよりも20cm以上大きくなっていた。みるみるうちにそのXLサイズのロングトレーナーが彼女の身体にぴったりと張り付いていく。特に、その巨大な双球は、大きめに作られている胸元からこぼれんばかりに膨らんでいく。姿勢を直すため、彼女は軽く上半身を動かす。それだけなのに、風船を膨らませたような胸元が、ゆっさ、ゆっさ、と揺さぶられる。ぼくは呆然と見守るしかなかった。

「…あたし、こんなに…おっきく、なれる…。 陽くん、どのくらいが…好き?」



<Graphs-Topへ>  <<もくじへ  <戻る  つづく>