【香織と僕】その4


「…やっぱり、びっくりしてる....」
「....え、いや、その、…な、な、なに言ってんだよ。ほら! コテージュの…」

そう言いかけたところで、香織のうつむいた顔がぱあっ! と明るくなる。

「わあっ! ほんとだ! すっごく久しぶり! ね、新作でしょ? 早く食べよ!」

香織にとって、ほんとうにほんとうの大好きなお店のケーキ。おまけにその‘新作タルト’ときたら…。その明るさの戻った顔を見て、ぼくも、彼女がうれしそうにぼくをコテージュに連れて行くときのことを思い出してほっとため息をつく。…変わってない、いつも通りの、香織だ。

うれしさの余り、ぴょん!とひとジャンプする香織。それと同時に、ゴツ! という鈍い音が天井に響く。嬉しさのあまり飛び跳ねてしまった香織の頭の上には、軽いへこみが出来ていた。

(おお、さすが2メートル。) ぼくは、つい、そんなことを考えて、ぼーっと玄関先に突っ立っていた。

「あ、いったぁい…。でも、うれしいな、早く食べよ! 上がって上がって!」
「おう、でも、相変わらずおっちょこちょいだなぁ、香織は…。」
「えへへへ....」

いつもの雰囲気に戻った。ほっとしたぼくは、いつものように、ちょっとからかいながら部屋へ入っていく。しかし、香織が部屋に入るとき、ぐぐっと上半身を折り曲げ、ドアを通り抜けるために身体をひねり気味にして入っていくのを見て、またその大きな身長を意識せずにはいられなくなった。

屈むときに、来ているシャツの生地が垂れ下がり、その奥にある大きな胸が後ろから丸見えになる。まあるい肌色のふくらみを、ピンクのバスタオルらしきものが包んでいた。しかし、その巨大なバストを隠すことなどできず、胸の先のごくわずかな部分だけが隠れているだけだった。

続いて部屋に入ると、香織はぺたり、とお尻をついて長い長い脚を横にくずして座る。ぼくは、彼女のライティングテーブルのイスに座るが、その位置で身長212cmの香織の上半身とが釣り合い、ちょっとだけぼくが彼女を見下ろす形になる。

すると、目の前には1m41cmのバストがシャツからこぼれんばかりに飛び出ている。目線がついそちらに向かうのをこらえて、香織にケーキを差し出した。

「…はい、お待ちかね、コテージュの新作。」
「わぁい! ね、今回は何種類?」
「…うん、タルト2種類とケーキが2つ。」

そう言って、片手の掌を差し出す香織。ぼくが両手で持っていた、8個入りの大きな箱がその大きな手にすっぽりと包まれてしまう。軽く上下させて重さ(軽さ、と言ったほうがいいのか?)を確かめると、大きな人差し指と中指、そして親指を使って器用に箱を開けていく。そして、ぼくの方に差し出す。

「ええっと、どれから食べようかな…あ、陽くん、どれがいい?」
「香織が先に選べばいいよ。2つずつあるしさ。どうぞどうぞ」

それぞれに1つずつ。ぼくはタルト・オ・フレーズを取り上げ、香織はモガドールを“つまみ上げる”。

コテージュのケーキは、味はもちろん、値段の割に大きめのサイズにも人気がある。テイクアウトしたとき、香織はいつも両手で持って、そのさきっぽからパクっと食べはじめるのが好きだった。....しかし、今の巨大なボディでは、そのラージサイズさえも、ちっちゃな一口サイズにしか見えない。ぱく、とモガドールを食べたと思ったら、次々に他のケーキを、大きな指でつまみ上げ、あっという間に残り3種類を平らげてしまう。

「....うん、やっぱりコテージュ。どれもおいし! ...けど...」

ぼくはまだ1つ目だ。香織は掌の箱の中身とぼくの食べている口元を交互に見つめ、身体を左右にゆっくり揺らしながら、上目使いに悲しそうな顔をする。....(いいな〜、あたしも、もっと、食べたいな〜)という無言のリクエスト、これも、香織のいつもの手だ。....ただ、その豊満な巨体での動きは、いつもの“幼なじみ”の他愛ないものとしては見ることができない。

身体を揺らすたびに、その上半身の大半を占めるすさまじい大きさの巨乳が、ゆっさ、ゆっさ、と、まるで生き物のように動く。片方だけでもバスケットボールよりも大きく膨らむ山…。ケーキを食べるのに集中していたぼくの意識は、あっさりとエッチな欲望に支配される。

しかし、香織は、無邪気に、その巨大な双つのカタマリを揺らし続けている。

「....ね、陽くん、...あの...」

ふだんと違って、そのでっかいオッパイに気をとられてしまい、いつもなら、すぐに「ええいっ、一口だけな?」などとすぐ反応するのだが、それどころではないぼく。
すると香織は、無言のリクエストの次の段階、“両肘を曲げて胸元で手を組む”ポーズを取り始める。

「....おいしい? それ? ねぇ?」

ただでさえ、大きな胸元に30〜40センチもの高さで聳えている雄大なまあるい山脈が、両肘につぶされて楕円形にゆがみ、さらに10センチ近くぼくに向かって、ぶるるん、と飛び出してきた。その前で組んだ両手が、巨大な乳房にのしかかり、膨らみがさらに強調されてエッチな形になっていく。

ぼくは、口の中にあるタルトの味より、股間に集まる血液の流れに気をとられる。熱い滾りがみるみる膨らんでいく。

彼女の視線が、ぼくの口元から床のケーキに移る。とちゅう、股間の膨らみに気づかれそうになったぼくは、あわてて、残ったタルトを飲み込み、いいつくろう。

「...あ、あげるよ、残り。...あ! あの、ちょ、ちょっと、用事思い出しちゃったから、また来るよ。...元気そうでよかった...じ、じゃあ!」
「あ....あの、陽くん?」

そのまま玄関にダッシュし、靴をつっかけにしたまま、飛び出すように香織の部屋を出ていった。



「....陽...くん....」



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