【おおきくなる、姉妹。】    このおはなしを、わたくしのサイトへ599,999ばんめにきてくださった、三山さんに、お贈りします。

   げんあん:三山さん へぼなぶん。:WarzWars


その、に。

警告:このお話は大人向けの内容が含まれる予定です(今のところは、まだですが)。
法的な成人に達していない人は、そうした内容が含まれている、という警告があったものを読んではいけません。


これは架空の話であり、実際に存在する人あるいは事柄に類似することがあったとしても、まったく偶然のことです。



「もう、よろしいですか?…そろそろ、失礼したいので…。」

そんなサキ姉の声をきっかけに、ふっ、と凍った空間が解けたような気がした。
それを感じた小百合さんと少し会話をして、店を出て。

すぐカッカしてびゅびゅーん!とはね上がる、あたしの“喜怒哀楽メーター”なら、
上がってすぐ、そのスピードと同じくらいひゅーん、と下がっちゃうんだけど、
いつもクールなサキ姉だと、ふだんほとんどないだけに、さっきみたいに一度スイッチが入るとものすごいことになる。

それにしてもサキ姉、あんなに怒ること、あるんだ…ま、今日はそれも無理ないよね…。

小百合さんのドレス…おまけに、美貴にいちゃんたら、下着まで預かってきていた。
それでも、美貴にいちゃんの頼みだから、サキ姉もすごくていねいに洗濯してた。…何も聞かずに。

あたしたち、美貴にいちゃんの夜のバイト、あの店のボーイやってる、って知ってるから。
おまけに、サキ姉って意外にも家事全般が大好きなんだよね…で、ご飯でも掃除でも洗濯でも、美貴にいちゃんがうれしそうな顔をするのを見るのが、大好きなんだ。もちろん、あたしも…。

でも、さっき小百合さんに会って、あんな美人が美貴にいちゃんの周りにいっぱいいるんだ…ってわかっちゃうと、ちょっと…気になる。
たぶん、サキ姉も「中学生」って言われたことより、そっちの方が気になってたのかも。

それでもサイショクケンビ、ってサキ姉にある言葉だと思う。
サキ姉って、すっごく物知りで、すっごく器用で、すっごく優しい。この辺じゃすごく有名な進学校に通ってるんだけど、そこで成績はいつもベスト10に入るくらい。おまけにルックスのほうも、ベスト10には確実に入っている。ただ…歳のわりに、そのちっちゃいボディがポイントを稼げない理由みたい。
それでも、あんまりしゃべらないわりに、たまに話すとすごく大人びて、ちょっとミステリアスな雰囲気があって、“藤萌学園のクールビューティ”と言えば、街で知らない高校生はいない、っていう噂。
そんなことをあたしが知ってるのは、なぜかあたしのクラスの男子もサキ姉のこと話してたから。…まぁ、こんだけきれいだったら、男子たちのお兄さんはもちろん、お姉さんだって話題にしないわけがないよね。

すっと切れ長の、でも瞳の大きな眼、ハーフみたいによく通った鼻すじ、みずみずしく光る小さな唇。可愛らしい整った卵形の顔を取り巻く、肩で切りそろえたつやつやのボブヘア…。

ああ、遠くにいっちゃった、おとうさん・おかあさん…才能でも、美貌でも、どっちでもいいから、も少し、あたしの方にも分けて欲しかったなぁ…

両親が交通事故で亡くなってもう3年。サチ姉とあたしはいま、ちっちゃなマンションで二人暮らしだ。となり町に住んでた叔母さんが「一緒に住もう」って言ってくれたんだけど、サチ姉が丁重に断って、残った財産でこのマンション丸ごとを買った。
…共働きだったから結構お金があったみたいで、サチ姉が頼んで、弁護士さんに仲立ちしてもらって、あたしが大学を出るくらいまではここの家賃で暮らせるようにしたんだ。

おかげで、サチ姉も、もちろんあたしも、バイトとかしなくてもなんとか暮らしていけてる。…ただし、あたしたちの住んでいるところは、持ち主なのにマンションの中では意外にちっちゃい2LDK。…これはサチ姉のポリシーのせい。

「ちっちゃい私たちには、これで充分…広いと、掃除も手入れもたいへん。」

ふたりとも、そんなにおっきくない。ま、合理的、っていえばそうなんだけど。

ま、こんなミニマムだと、外に出たらさっきみたいなことはしょっちゅう起きる。

でもサキ姉のおちついた態度を見てれば、小百合さんの対応はちょっとあんまりだって思うけど、あたしについては仕方ない…かもね。バスや電車や映画館や遊園地では、必ず小学生扱いされちゃうし…けど、い、いいの!
クラスメートからは「かわいい〜」って言ってもらったり、頭なでられたり、リボン付けられたりして、もーミニマムな上に、ほとんど幼稚園児扱い…ぐすっ、つ、つらくなんかないもん!

美貴にいちゃんも別に生まれてすぐに事故で両親を亡くし、武道家のおじいちゃんに育てられた。うちとも小さい頃から家族同然のつきあいだったので、両親はなにかと面倒をみていた。
そのおじいちゃんも美貴にいちゃんが18歳になったとき亡くなっちゃって…偶然にも、あたしたちの両親が死んじゃったのがその直後…。
そんなわけで、家賃半額で、ってことにして、マンション住まいになってもお隣さんになってもらった。で、いつのまにか、ご飯・洗濯はあたしたち(というか、サキ姉)の担当、みたいなことになっていた。

美貴にいちゃんは、バイトしながら大学に通ってる、いまどき珍しい“苦学生”。身長が190cmもあって、実は‘脱いだらもっとすごいんです’系のスポーツマン体型…。ちっちゃい頃から、おじいちゃんに相当鍛えられたんだと思う。そこそこハンサムだし、あのお店のコンパニオンさんたちにはすごく気に入られてるんだろうな…

(それにしても…小百合さん、きれいだったな〜。 プロポーションもよかったし…いいなぁ。あんな風になれたら…。)
 さっきのことを思い出しはじめたとき。

「…ごめん、サチ。」 ぴた、と歩くのをやめて、サキ姉。
「?」
「私…迷っちゃったみたい…」
「ええっ!?」

あたしはびっくり。…だって、しっかり者のサキ姉が、道に迷っちゃったなんて、信じられなかった…
それに、手を引かれていたので、それまであたしはほとんど周りを見てなかったし…。
けど、来たときとは何か違う雰囲気…。

「…ソコのかわいらしい、お二人サン! どうしマシタ? 道に迷っちゃッたデスカ?」

あたしたちの後ろ、だいぶ高いところから声が聞こえ、思わず振り向くと…わぁ。
すっごく背の高い、ピンクの髪を腰までなびかせた女の人が、にこにこしながら立っていた。

「…この道に迷って来ちゃッタのナラ、もしかして、心のナカにも、ナニカ迷ってるコトが、アリマスね?!
 でもダイジョーブ、その悩み、ワタシ・ナナミが解決してあげマース!」

そう言うと、その女の人は腰に当ててた右手をひゅ、とあたしたちの前に突きだし、ぴしっ! とピースサインを決めてくれた。…って、なにがなんだかわからない…。

それにしても…ナナミ、さんていうの?…なんて、おっきな身体なんだろ…。だって、美貴にいちゃんよりも背が高くって、おまけに、あの店の小百合さんもびっくりの、すんごいプロポーション。

ビーチボールが入ってるの? って思えるほど大きなバストが、ぼいいぃぃん!って飛び出してて、真っ白なTシャツの胸元が弾け飛びそう…その膨らみのせいか、かなりサイズ大きめのTシャツみたいだけど、おへそが丸見えで、まるでちびT。きゅっ、とくびれたウエストが見えてるから、なおさらそのバストの大きさが目立ちすぎるほど目立ってる。
その上に着ている革ジャンに合わせた革のタイトスカートの腰は、バストほどではないけど、ばんっ!と張り詰めて、すらりとした長い長い両脚が伸びていた。

その真っ白な脚が動き、何も言えずにほわーんと突っ立ったままのあたしたちの方に、近づいてくる。

だんだん近づいてくる、その女の人の顔を見て、またあたしはびっくり…だって、すごい美人なんだもん。まるで外国の女優さんみたいな、吸い込まれるような青い瞳。すらっ、としたちょうどよい高さの細い鼻。つややかで、新鮮なサクランボみたいにぷるぷるした、ちっちゃな唇…でも、冷たい感じがしないのは、人なつっこくて、なんだかちょっとヘンテコな発音と言葉遣いのせいかも。

ナナミさんは、なぜか1〜2mくらい手前で立ち止まり、にこにこしながらあたしたちを見下ろしている。

「あらン、ごめんナさい! そんな風になっちゃうナンテ…。この、ワタシのからだのせいですネ…。でも、ダイジョーブね…あらためテ、コンニチハ。ワタシ、ナナミといいマス。よろしくネ!」

ぺこり、と軽くおじぎをするナナミさん…ちょっとした動きでも、そのおっきなバストがぶるん、ぶるん、と揺れ動く…。そっか、これ以上近づくと、きっとあたしたち、そのおっきな膨らみに隠れて、見えなくなっちゃうんだね…。

そんなことを考えてると、ナナミさんはぐいん、あたしたちの前にしゃがみ込み、両手を頬に当ててじっとサキ姉の目を見つめる。

そして、サキ姉に、優しく囁いた…

「…アナタも、ワタシみたいに、なれる、って言ったら、どうシマスか? …サキ・さん?」
「! どうして、私の名前を…」
「ンフフ…そう、ナナミは、なんでも知ってマス、あなたのこと。…悩みも、望みも、ネ…。さ、こっちデス」

そう言うと、ナナミさんは、おっきなバストを揺らしながら立ち上がり、くるり、と振り返ると先に立って歩き出す。

サキ姉もあたしも、なぜだか魔法にかかったみたいに、その後についていった…。



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