<ほんあんです>+ようやく+そうさくいり。

【お隣のちっちゃな妹】 ( げんさく:は、某外国の方です。 )


 モリィのゆううつ



‘モリィ・マウンテンズ’の贅沢な、そして誘惑しているような見送りにどぎまぎしながら、ティムはそのまま家の前の路地まで押し出されていった。

「じ、じゃあ…あの、今日はごちそうさま!」

モリィがつかんでいた肩から手を離し、そして、背中にのしかかっていたでっかいバストの圧力から解放されたとたん、ティムは感電したように飛び上がり、ぎくしゃくとあいさつした。

…それを見て、モリィは思わず吹き出す。

「あら、どしたの? ティム? メドゥーサじゃあるまいし、あなたを石にしちゃったりしないわよ。......ね、ちょっと話さない?」
そういうと、エプロンをはずしながら、歩道脇の塀にもたれかかり、こくん、と首をかしげて促す。ティムも、ちょっとホッとしながら、すぐさまモリィの隣に寄りかかる。

「ティム、きょうはホントにありがと、ローラの相手をしてくれて。」
「い、いやぁ、おやすいご用さ。それに、とても楽しかったし。…すごくいい娘だよ、ローラは。…あ、いやその、変なこと、なんて、な、なかったからね、ホ、ホントにさ!」
「うふふ、…いいのよ、ティム。どうせ、ローラのほうがなにか無理難題いったんでしょ? 恋人ごっこ、とか、赤ちゃんごっこ、とか…。ごめんなさい、あなた真面目だから…ちゃんと、つきあってくれる、とは思ってたけど。」

ティムは、どきりとする。....玄関での‘お別れのキス’を目撃したくらいで、どうしてそこまでわかるんだ? ....昔から‘モリィ姉’は鋭かったが、図星を言い当てられ、ティムはまた、落ち着かなくなってきた。

…こうして、並んで立つと、モリィが自分よりどれだけ成長しているか、ティムは改めて思い知らされる。

…なんて素敵な女性になったことだろう!

月の光が、その大きな見応えのある二つの曲線の上に降り注ぎ、そこから下には、くっきりとすばらしい影を落としていた。ティムは、彼女が家でよく着ている大きめのセーターを 盛り上げるその膨らみに、どうしても気をとられてしまう。

そんな気持ちをよそに、モリィはティムといるとき、ほんとうにくつろいだ気分になっていた。彼女は、自分がティムに感じるこの気持ちは、彼が自分に感じるのと同じだと考え、それになんの疑いも持っていなかった。

やはりなんといっても、二人はもう何十年もお隣さん、幼なじみなのだ。…しかし、ティムの方はいま、そうした‘友情’について考えているわけではなかったのだが。

モリィは、ローラとのことをそれ以上深追いせず、最近とくに忙しくなっているバスケットの部活、そして、最近始めた新聞部の活動のことなど、自分の高校生活について、ぽつり、ぽつり、と話してくれる。

…こうして二人きりで話すのも、ずいぶん久しぶりのことだ。そして、ティムがこんなに聞き役に徹するのも…。ティムは、こんな時は、いつも静かな聞き役だった。
ふだんは明るくポジティブで知りたがり屋のモリィが、静かなトーンで話すとき。…その内容は、たいていが、家族にも話せないような愚痴や、大切な相談事。そして、それを聞いてあげるのが、ティムなのだ。

しばらくして、ふ、とため息をつくモリィ。

「…それにしても、あたしのこの‘見た目’でつきあってくれ、っていう男の多いこと。もう、うんざり。…でも、すくすく育っちゃってる女のコほど、たくさんの男の子から、なぜか‘扱いやすい’って思われちゃいがちだ、ってのも〜残念だけど〜わかったけどね…」

この2年で‘あまりにもぐんぐん育ってしまった’モリィの気持ちがわかるだけに、彼女が話すいろいろな経験談に、ティムはいっしょうけんめい聞き入った。

「....そりゃ、こんなに育っちゃったら、目立っちゃうのはしょうがないかな、って少しは思うけど。…ああ、どうして、男の子って‘あたし自身’のことを知りたい、ってまず思ってくれないのかな?.....」

…ちょっとした沈黙。

こんな時には、たいてい、応える必要がないのはティムもわかっている。しかし、この疑問については、今のティムも答えようがない。…だって、ティム自身が、幼なじみではなく、彼女の言うのと同じ‘男の子’としてモリィを見てしまっているからだ。
…ちょっとした罪の意識と、そんな魅力的な女性と差しで話す自分の幸運に、ティムの心臓はどきどきし始めた。

しかし、がらっと口調を変えた、モリィの次の言葉で、ティムの心臓は止まりそうになった。

「・・・・と・こ・ろ・で。ねぇ、ティム。きょう、どうだったの? ローラは? あなた、どう思った? ね?」

にこにこと、なぜか急にうきうきとした様子で尋ねるモリィ。ティムの方に、くるっと向き直り、身体を上下させている勢いで、セーターを押し上げるでっかい膨らみがゆっさ、ゆっさ、と弾んでいる。…が、さすがのティムも、モリィの‘見た目’のことなどまったく頭から吹き飛んでいた。

…ティムにとっては、思いもよらない、まさに“爆弾質問”だった。


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