【真琴と誠】

  その2)しゃかい。

「…ええっと、片桐先生、どの地図、って言ってたっけ?」
「ほら、世界地図だよ、いちばん大きな奴。…まったく、どうして真琴とぼくが週番のときにかぎって、でっかい地図、使うんだろうなぁ…」
「…あ、それ、あたしだからじゃない? だって片桐先生、身長148cmしかないんだもん、あたし、頼りにされちゃってる、ってカンジ? ふふっ」




今日のさいしょの授業は社会。…で、号令かけたとたん、片桐先生が、

「あ、いっけな〜い、地図とプリント、準備室に忘れちゃった〜、ごめんなさい、週番の人持ってきてくれますか〜? えっと、あ〜、ちょうどよかったぁ〜。西川君、木原さん、ちょっと、準備室に取りにいってくれますか〜?」

…とまぁ、おっとりした口調であっけらかん、とぼくらにお願いする。そして、どことなく憎めない片桐先生の指示に、「はいっ!」と元気よく返事をするのは、これまた、“元気いっぱいすぎ(?)”で、返事と同時にぴょん!とバネのようにとびあがる真琴だったりするわけで…。

ふしぎなんだけど、ぼくと真琴は、おなじクラスで、しかも同じ班だったりするのは、ちょっと偶然もいいかげんにしてよ!っていう感じもするけど、ホントのことだからしかたがない。

…そんなわけで、毎回隣の席で、ぼくは、その「ぴょん!」に合わせ、そのでっかい胸がゆっさ、ゆっさ、ぶるるん、と揺れ動くのを、一番いい場所で眺めるのが恒例行事になっている。

真琴は、1ヶ月間になんと身長が10cmも伸びて、2m13cmにもなっていた。おまけに、5月の身体測定のとき測った胸囲が、なんと、1m46cmにもなっていたという。それでいて、アンダーバストが96cm、ウエストは67cmと、どっちも1ヶ月前に比べてたったの2〜3cmしか増えていなかった…。てことは、胸の膨らみは、ブラのサイズでMカップ(つまりトップ−アンダーの差が43cm)から、なんとさらに7cm大きく、ちょうど50cmにまで成長しちゃってる、ってことなんだ。それって、つまり…えーと…P?カップ?…って…(絶句)。

ブラウスをぱんばんに張りつめさせ、隣で見るとまったく別の生き物のように動き回るミサイルみたいな2つの膨らみの谷間には、30cmのものさしなんか、すっぽり隠れてしまうにちがいない。

おまけに、“元気いっぱいすぎ”の真琴は、その体格で「ぴょん!」と軽く飛んだとしても、4〜50cmを超えてしまうのをまったく忘れてしまっているんだ。

べこんっ!

…という音がして、天井がへこむのは、きょうだけのことじゃない。…クラスのみんなも、もう慣れっこになっていて、「やったぁ!」とか「これで12個め!」とか口々にはやし立てる。…12個、っていうのは、天井のへこみの数…。




…というわけで、授業がはじまったばかりなのに、ぼくらは社会科準備室に向かった。

ぼくはやや早足でどんどん廊下を進んでいく。しかし、真琴は、意識してゆっくり、ゆっくり歩いていた。…彼女がふつうに歩いてしまうと、ぼくは本気で駆け足するくらいのテンポで進まないと、あっという間に置いて行かれてしまうだろう。

…見上げると、天井につかえそうなほどの高さに真琴の頭はあり、そのすぐ下にある、すさまじい大きさのボインが、そのゆっくりした動きに合わせて、ゆっさり、ゆっさり、と揺れ動いている。胸板から40cmは飛び出している。そのボディは、中学1年生とはとても思えない。

…どんどん大きくなっていく真琴。…その光景を目の当たりにするたびに、ぼくは心のドキドキが収まらず、その姿には、いつまでたっても慣れないでいる。

ぼくが先に準備室に入って振り返ると、真琴の姿は、入り口のところでは、首から下しか見えない。おまけに、その2つのとてつもない膨らみの先のほうがに、準備室に入りこみ、そこだけが陰になっていた。

真琴は、頭を入り口の梁にぶつけないよう、その巨大なボディを、ゆっくり、少しずつ折り曲げて入ってくる。…胸板にふたつ、特大のビーチボールをくっつけたような膨らみが、入り口につっかえそうだ。「んしょ、…えい…」 そうつぶやきながら真琴が身体をひねると、ぱんぱんに膨らんだブラウスが左右に盛大に揺さぶられ、彼女にとっては‘狭い’間口に、文字通り押し込むようにしている。

真琴の全身が中に入ると、ただでさえ狭い準備室がますます狭く感じられる。あまり近づかれると、顔を見ようとしても、2mを超えるボディにはアンバランスなほどに大きく飛び出た胸に隠れてしまう…。

そこから視線を引き離して、棚を見上げると、片桐先生のリクエストの品はすぐ見つかった。

「あ、あれだ、…うわ、一番上の棚だよ、まいったな…」
「え、これのこと?」

狭い準備室を有効に使うため、天井いっぱいまである資料棚の最上部は、2m50cm近い。しかし、その上にあるロール状の地図を、真琴はなんの気なしに、ひょい、と持ち上げる。…ぼくなら、脚立を4〜5段上がったとしても、ぎりぎり届くかどうか…。

「楽チン楽チン! …あ、これ、セイくんとおんなじくらいかも!」

そういうと、あぜんとして真琴を見上げるぼくの脇に、その世界地図の“巻物”をすとん、と立ててみせる。…たしかに、ぼくの背丈と同じか、へたをすると高いくらい。しかも、その直径は10cm以上あり、重さもかなりありそうで、ぼくなら両手で抱えても、教室まで一人で運ぶのは相当の大仕事になりそうなサイズだった。

「ね! こんなおっきな地図、片桐先生じゃぜったい無理だよね! …それに、セイくんだけでも、ちょっとむずかしいかも…じゃ、プリントはまかせるね!」
「お、オッケー…」

真琴は、槍かなにかのように、そのジャンボ地図を片手で軽々と持ち上げて見せる。と、プリントをえいやっ、と持ったぼくを見下ろして、いたずらっぼい笑みを見せると、真琴はその世界地図を自分の身体の前に持ってくると、急にこんなことを言い出した。

「さぁ、ここで、ちょっとした手品です〜! この大きな、大きな、世界地図。それが、なんと途中から消えてしまいます! さ、じっくりご覧下さいっ! …うふふっ」

そういうと、真琴は、そのちょっとした柱みたいな世界地図を両手で持ち上げると、ブラウス越しに、自分の大きな胸の谷間にむにゅむにゅと押し込んでいく。地図はその豊満なバストの深い谷間にあっさりと潜り込み、ぼくの位置からだと、そのてっぺんから4〜50cmのところまでが、まったく見えなくなってしまう。

「はいっ! いかがでしょう? あたしのヒミツのポケットで〜す!」

真琴は、そのままぼくに向かって上半身をかがめてくる。ただでさえすごい大きさの膨らみは、前傾姿勢で重々しくブラウスを張りつめ、ぴちぴちになったボタンの合わせ目からこぼれそうに柔らかな肌が間近に迫ってくる。
胸に埋め込まれた世界地図のおかげで、その巨大な2つの塊はブラウスごと真ん中に寄せ集まり、むっちりとエッチな形に変形していた。おまけに、真琴はその地図を上下に動かし始める。とほうもない膨らみの間から、地図のはじっこが出たり、入ったりを繰り返し、なんだかものすごくいやらしい…。

…無邪気な真琴と、対照的にすさまじく大きく発達を遂げているボディ。ぼくはどんどんエッチな気持ちになっていく…。

「え、あ、あのさ、片桐先生、待ってるから、は、早くいこうよ!」
「…あ、あん、まってよ、セイくん!」

ぼくは、自分の中でどんどん膨らんでいく欲望を忘れようと、くるり、と真琴の“いたずらなポーズ”から目を引き離し、準備室を出ていく。

はぁ…。 早足で教室に向かいながらため息をつく。

どうして、真琴は、ぼくが男の子なんだ、ってことを忘れちゃうのかなぁ…。



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