【真琴と誠】  このおはなしを、わたくしのサイトへ6666"7"ばんめにきてくださった、誠さんにお贈りします。

  その1)あさ。

朝5時。家の近くにあるバス待合い所で、ぼくは眠い目をこすりながら、バスが来るのを待っていた。今日も朝練で、いつもより1時間以上早く家を出た。奥の壁に貼ってある時刻表をぼけーっと眺めていると…

ばーんっ! …すごい力で後頭部を叩かれ、一気に目が覚める。 「セイくん、おっはよう!」

頭上から声が降ってきた。
「…いってぇ…。 まこと! もっと手加減しろよな、もう…」
「でも、目、覚めたでしょーが?」
「…あの、ねぇ…。…だいたいさ、ぼくのこと、なんだと思ってるのさ? 毎朝毎朝いじめて…」

上からの声に向かって、ぼくはせいいっばい背伸びをして、文句をつける。

…ぼくは、西川誠、中学1年になったばかりの13歳。そして、毎日頭を叩いてぼくの眠気を吹き飛ばしてくれるのが、ぼくの隣の家の‘まこと’、木原真琴、同じ中学1年生。アーモンド型の大きな瞳、すらりと伸びた鼻とつやつやの唇…美人、ってのとちょっとちがうけど、とっても元気で明るい。

さらさらの髪が、ふるふる、と首の振るのに合わせて、細長い、ととのった卵形の顔の輪郭のまわりで揺れる。
「ええっ? セイくん、そんなぁ! あたし、そんなつもり、ぜんせんないって!」

そういうと、ぼくの方を‘見下ろし’ながら、腰に両手を当てながら、ぐいん、と身体を曲げてくる。その動きで、肩の辺りできちんと切りそろえた髪がふわっ、と胸の前に落ちてきた。…そして、ぼくの目の前に、真琴の顔がアップで迫ってくる。

「キミは、もっちろん、お隣の幼なじみの“誠ちゃん”に決まってるじゃない? …でもさ、キミも“まことちゃん”じゃいやでしょ? で、音読みして‘セイ’。こっちのほうがかっこいいじゃん? だめ?」

じっ、とぼくの顔を見つめる。…ぼくはなぜかどきまぎして、下を向く。すると、ブラウスの胸元から、真琴ご自慢の、おっきなバストの谷間が見える。
上着のブレザーは、そのすごい膨らみのため、お腹で閉じたボタンから上が閉まりきらない。それどころか、ふつうなら胸の正面でしっかり直線を描き、いかにも制服らしく見せる襟の部分が、そのきゅうくつそうな2つの塊の脇に回り込んでしまい、前からはほとんど見えない。
胸の部分だけ余裕をもたせたブラウスも、上の2つのボタンは留めずにいるが、一番大きく膨らんだ部分は、今にも爆発しそうに飛び出している。

「…いや、その…悪くは、ないけど…」
「じゃ、いいじゃない? …あ、まーたあたしの胸元見てるし。ふふっ、中学生になったとたん、急にエッチになってきちゃうんだから、セイくんは?!」

そう言いながら、真琴は、ぼくの前にしゃがみ込むと、こんどは自分から胸元を両腕で押さえて上半身を揺する。とてつもない大きさのバストが、襟からむにゅう、とはみ出して、ぶるん、ぶるん、と盛大にはね回る。…ぼくの顔は真っ赤っかになるが、でも、そこから目が離せなくなってしまう。

こんなふうに、ぼくのことをからかうのは、小さい頃からの真琴のいつもの習慣だった。
…しかし、ちっちゃな頃は、こんなエッチなやり方でからかったりはしなかったのに…

「…そうそう、今日はまた採寸があるの、競泳用の水着だってさ…えーと、なんて会社だっけな、なんか聞いたことあるんだけど、忘れちゃった…ま、いいか」

ふ、と思いついたように、話題を変える。…忘れっぽくて、楽天的なところも、ちっちゃい頃からだ。

「まだ、おっきくなってるのよね、あたし。…最近スピード落ちてきたけど、先週測ってビックリ! いま194cmもあるんだって! …もしかして、セイくんとちょうど30cmくらい違う?」
「そ、そうかな?」

にこにこ笑いながら、真琴は、叩いたその頭を、手のひら全体ですっぽり包み込み、なで、なで、と子どもにするように、なでまわす。

「…や、やめろよ、悪ガキあやすみたいなまねは…」
「…え〜、だって、セイくん、まだ子どもみたいなんだもん…。あたしもこんなにおっきくなっちゃうしね。…このまま夏休み越したら、まーた去年の秋・冬もの着られなくなっちゃうかもなぁ…。もーイヤんなっちゃう。おまけにこの胸だって…」

そういうと、今度はそのでっかい胸を両手で持ち上げながら、ゆっさ、ゆっさ、と揺さぶり、ぼくはさっきよりも真っ赤になってしまう。…おまけに、こんどは、股間が…。

そのときぼくは、同じ中学に入学したときに、真琴がぼくに、あっけらかんと言ったことばを思い出していた。



「あのねあのね、すごいの!」 …そう、自分でも驚いたように、でもとても明るく打ち明けてくれた。
「…なんとなんと、あたし、バストが136cmもあんの! すごいでしょ? アンダーが93cmだからぁ…えーっと、そう、43センチ差! もう、おかあさん困っちゃって、“あんた、こうなったら、ダンナさんの転勤でアメリカに行った妹に頼んで、ブラは逆輸入よ!”だって。…てへへ」

…ちょっと調べてみたら、ブラジャーの大きさって、胸のてっぺんで測った大きさと、胸の下で測った大きさの差で、いろんなサイズかあるそうだ…家で、お父さんのパソコンを使って調べてみたら、カップ、っていう、つまり胸を押さえる膨らみの部分の大きさは2.5cm刻みで、A・B・C・D…って増えていくんだ。
でも、ぼくが調べた限り、せいぜい大きくてもIカップ・つまり差が30cmくらいが日本で買えるサイズでは最大みたい。

(…それなのに、真琴のバストは、“差が43”ってことは…。Iカップより、10cm以上大きい、ってこと? …それって…)




身長だけでなく、すっごくでっかくなった真琴の“バスト自慢”のことをぼーっと思い出してのぼせたぼくに、真琴が声を掛けてくる。

「…あの、ね、セイくん? セイくん? どしたの?」

また、ぼくの目の前で、その凄まじい2つの膨らみが、ブラウスのボタンをはじき飛ばさんばかりに、揺れ動く。その動きで、我に返る。

「…あ、え? い、いや、だ、だいじょぶ、なんでもない!」

ぼくの身体の変化を知ってか知らずか、ふ、と待合所の壁にかかる時計に視線を移して、真琴は急に大きな声を出す。

「…え、あ、いけない、もうこんな時間かあ。 バス来ないね? 間に合うの、セイくん?!」
「え? う、うん…あれ? おかしいな、もう15分もたってるな…」
「まずいよ、セイくん、あたしも朝練、でなきゃ、って思って来たのに…。よし!」

そういうと、あわてて前傾した姿勢から立ち上がる。真琴の顔がみるみるうちにぼくをはるかに追い越して、すっかり立ち上がってしまうと、ぼくの頭はせいぜいそのでっかい胸の下あたりにしか届いていない。その、もの凄い盛り上がり越しにぼくを見下ろし、ぴ、とウィンクをすると、くるっ、と振り返って、ぼくに背中を向けると、こんどは、ぐいん、と膝を曲げて一気にしゃがみ込む。

「さ、あたしにおんぶおんぶ!」
「へ? な、なに?」
「さあ、早く! あたし、今日荷物少ないから、ダッシュで学校まで走れば間に合うかも!」
「…え? え?」
「セイくん、遅刻しちゃうと、一人で後かたづけでしょ!? 遠慮してるヒマないよ!」

真琴の勢いに圧倒され、おずおずとその広い背中にしがみつく。と、ぼくの両脚に、がしっ、と真琴の力強い腕が回り込む。

「じゃ、いくよ! えいっ!」

真琴はぼくの身体を、まるで重さがないかのように一気に持ち上げた。その瞬間。

ごぇん!   …もの凄い音が響いた。

「…う゛…」

…そこから、学校にたどり着いて、真琴に揺すり起こされるまで、ぼくの記憶はなかった…。

その日、ぼくは、おでこのでかいたんこぶに包帯を巻いて一日を過ごし、バス待合所に行った人たちは、天井の梁に、大きなへこみができているのを、ふしぎそうに見ながら、バスの来るのを待っていたという…。



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