<ほんあんです>+ようやく+そうさくいり。

【バスに、乗ると】 ( げんさく:は、某外国の方です。 )


 その1



田舎をずっと走る私の旅は、3日目にして先が見えなくなった。

…というのも、今まで20万マイルもの間故障1つなく、信頼しきっていた私の愛車が、たった20ドルのウオーターポンプの不調のために、‘故障なし’という栄光を忘却の彼方に運び去ってくれたからだ。

高価な不凍液がポンプからあふれ出し、焼きたてのパンのように水温計の目盛りはみるみる赤い警告ラインに達していた。

私は、だらだらとエンジンから流れ落ちる青い水流を呪い、愛車をかばいながら運転し、ある小さな街までたどり着いた。・・街の名前? なんと言うところだったか・・自分でもぼんやりとしか覚えていない。

惰性でなんとか車を滑り込ませた最初のガソリンスタンドの、オーナー兼たった一人の店員が、その街で一番の自動車工だった、なんてことはよくある話だろう。
私は、その街に壊れた車を置き、そこから60マイルも先にある観光客目当ての街に行って長距離バスに乗ることにした。

なんとかその街までたどり着いて一夜を過ごし、翌日は愛車が直るまでの間ちょっと観光でもして、夕方には車をとりに戻る・・・。

となれば、一休みできるところが必要になる、ということだ。

自動車工から、その街にある泊まり先の名前を聞き出すと、彼は、こう言ったものだ。

「いやぁ、もしこの辺りにゃなーんにもないから、ぶらぶらしてたってあっというまに飽きちまうよ。…なら、さっさと今日の最終バスに乗った方が、あんたみたいな都会人のため、さ」

私は電話を借りてこの街を出るバスの時間を確認すると、電話代として1ドル彼に渡し、車から1泊分のパッキングをした鞄を持ち出した。

そうして、私の新しい旅が、はじまった。…




さっそく私は、バスステーションに向かう。・・・停車時間がドラッグストアのように正確ならいいのだが。

到着してすぐ、私が向かう場所へのバスが出発したかどうか確認した。時刻表と時計を見比べて、幹線ルートのバスの便があとわずか15分で最終とわかったときには、スリルどころの話ではなかった。
チケット売り場の女性は、ビッガーズ・ブラザーズ・ラインが今晩あと2便あると教えてくれた。しかし、すでに1便は、売り場の女性の指さす先に小さく見えるばかり。おまけに最終便は30分ほど出発が遅れているが、それはもう満席だという。

私の顔には、今日1日がまったく終わりそうにもない厳しい日になったことを物語る、厳しい疲れの色が浮かんでいたのだろう。彼女は私にこう言った。

「1つだけ、シートが残っているんですが…それ、空席かどうか、ちょっとわからないんです…。」
「??」

その訳をたずねると、彼女は、すこしもじもじしながら、説明してくれた。

「…シートの最後尾の4席…そのうち、3つはアミさんの予約が入っているんです。」
「へぇ、3席もかい? そんなに独り占めしている、アミっていう人は、いったいぜんたい、誰なんだい?」
「アミさんはビッカーズのQC担当の調査員です。毎日、何便かのバスに乗り、車内のサービスについて調べるのが仕事なんですよ。」
「なるほどね。…でも、なんだって彼女には3席も必要なんだい? 調査器具でも、置くのかな…?」

そう尋ねると、受付嬢は、不思議な微笑みを見せながらこう答えた。

「ああ、そうか、そうですね、ごめんなさい、言い忘れてました。・・・アミさんはとっても身体が大きいので、2つ以上の席が必要になっちゃうんですよ。・・・それに、彼女、父親と叔父が、このバス会社のオーナーなんです・・。」

(そいつはけっこうな話だ! うまくしたら、でっかいでぶちんの、脂肪の塊の隣に座らせてもらえる、ってわけか・・・)

次の瞬間、私の頭のなかで、なにかが閃く。

〜もし、アミっていう娘が、俺好みに“正しいところが正しく”巨大だったとしたら、それは一見するに値する、願ってもないチャンスに違いない〜。

私は、素晴らしく大きなバストと巨大なヒップを持ち、なおかつ蜂のようにくびれたウエストの持ち主が、がっちりした脚をしたたくましくて大きな女性が、ほんとうに大好きだった。

大きければ大きいほど、グラマーであればあるほど、すばらしい・・・。もしかして、そんな女性に、出会える?!

・・自分がいかに興奮しているか、そしてこの旅で、でっかくてグラマラスな女性にどんなにか出会えないものかと考えていたことに、そのとき初めて気がづいた。

私はチケットを買うと、ターミナルにあるコンビニエンスストアの前に向かう。そこにはバスを待つ人々が数人たむろしていた。

その後10分くらいのうちに、待っていた素敵な若い女性の2人組と話して、行く先の街のことはほとんどわかってしまったような気がしていた。彼女たちはその観光地のリゾートで働いていたが、そこに住む気にはなれない、と話してくれたのだ。

こんな夜遅くでも、バスが満席になるはずだ。この街にいる半分の人たちが、その国立公園の近くにあるリゾートで働いていて、このバスは、リゾートで働く人々のための週末シフト向け増発便だった。このバスを使って、彼女たちは週末に職場と住まいを往復している、というわけだ。




定刻になると、空席のバスがやってきた。それは古めかしい50年代のバスだったが、よく整備され、清潔で手入れの行き届いたものだった。・・・願わくば、安全も保証して欲しいところだが。

列を作り、順番にバスに乗り込む。通路の上に灯る薄暗い明かりの中、私はバス室内の最後尾に「アミ」という女性らしき姿を見つけた。

彼女は魅力的な瞳の、卵形のとても美しい顔立ちをした、ブラウンの髪を肩まで伸ばした女性だった。

しかし、その頭の位置はずいぶん高い。・・・後席に行くにつれ、じょじょに高くなる座席の背もたれが、なんとなく彼女の座る座面の位置を想像させてくれる。通路にも、ややスロープがついている・・・。

疲れているわりには、楽々と通路を進み、最後尾の席へと向かう。しかし、彼女の頭の位置が妙に高いような・・・・他の客が押し合いへし合いしながら、荷物を天井のラゲッジに積み上げているので、最後尾のようすが、ここからではあまりよくわからない。

・・・なんとか最後尾の列にたどりつく。すると、ターミナルの受付嬢が言った言葉の意味が、誇張でもなんでもないことを、瞬時に理解した。

(  アミさんは、とっても大きな、大きな人なんです…  )

この女性は・・・巨大、などというものでは、なかった・・・。



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