<ほんあんです>+ようやく+そうさくいり。

【お隣のちっちゃな妹】 ( げんさく:は、某外国の方です。 )


 ステンパー家の“留守番係”



日曜日。ティムはリック=ステンパーの家で、なぜか留守番をしていた。
…というのも、リックの母親が、買い物に出かけた先のショッピングセンターからリックを呼び出したからだ。




ほんの2時間ほど、前のことだ。

「もう、しょうがねぇなぁ…姉さぁん、母さんから電話〜!」 リックはコードレスホンをテーブルに置くと、どかっとソファに身を投げ出す。

リックはティムに説明をはじめる。
母親の車が故障した、らしい。で、節約家の母親がリックを呼び出したのだ。リックは機械いじりが大の得意だった。まだ15歳なのに近所の修理工場でバイトができる腕前。しかし、免許を取れる歳ではない。

「そこは‘賢い母さん’のさ、賢いとこでさ…」

そう言ったとき、リックの姉のモリィがリビングにやってきた。

「リック、なんなの? 母さん…あら、ティム、こんにちは。元気?」
「あ、モ、モリィ、こんちわ…」
「…姉さん、母さんは直接、話したいんだってさぁ。」

モリィが電話してる間、リックがティムの耳にひそひそつぶやく。

「おれだけじゃなくて、姉さんも巻き込む気だよ、母さんはさ…。姉さんなら運転できる、けど、レンチとナットの区別だってつかない。だから、姉さんにおれを連れてきてもらって、俺は修理工、ってわけ。‘賢い母さん’はさ、一晩だって車をよそへ置いときたくないみたい。まぁこれなら、もしおれが直せなくっても、モリィ姉さんの車に乗ってくりゃいいわけだしな…。」

リックが話し終わったところで、ちょうどモリィの電話も終わりかけていた。

「…ええ、じゃ、それでいきましょ。約束よ。じゃ、3〜40分くらい待ってて。バイ。」
「姉さん、なにを交換条件にしたの?」 と、リック。
「え、やだ、なんだか悪巧みしてるみたいじゃない? そうじゃなくて、留守番係へのお礼をどうするの? って聞いてただけよ。」
「留守番…」「…係?」 リックと、ティムが順番に尋ねる。
「そう。......ね、ティム、お願い。あたしたちが出かけてる間、ローラと留守番しててくれないかしら?」
「???」
「母さん、すごく買い物しちゃった上に、2丁目のランブルおばさんを送っていくことになってるみたいなの。」
「ええっ! あの‘おしゃべり飛行船ママ’かい?」
「こら、リックったら!…最初は、あなたもローラも、みんなで行ければ、って思ったんだけど…。もし、母さんの車が直らないと…。リックの腕前頼み、ってだけじゃあ、ね。」
「なんだよ、それ!」
「…はいはい、ね、お願いよ、ティム。ね?」

モリィは、ティムの前にしゃがみ込み、手を合わせ、かわいくウィンクしながら小首をかしげる。‘モリィ・マウンテンズ’というあだ名通りの、でっかいバストが両肘に押さえつけられ、襟ぐりの深いトレーナーの深い谷間がティムから丸見えになる。

「…あ、う、うん、いいよ、モリィ。ぼくなんかでよければ…」
「うふ、あ・り・が・と。…さ、リック、行くわよ。」

その胸の大きさに似合わない軽快さで、さっと体を翻してリビングを出るモリィ。手のひらが隠れるほどの大きめのトレーナーなのに、胸だけがずとん!と飛び出し、振り返ったアクションで、双つの塊がまるで別の生き物のように、ゆっさ、ゆっさと揺れ動く。

モリィの‘お願い’から、ずっとそれを見つめたまま、ティムは、首まで真っ赤になっていた。
その様子を見たリックが、肩をすくめて、声をかける。

「あ〜あ、うらやましいこと。うちの美人姉妹のどっちにも好かれてるなんて、お前くらいだよ。…ま、悪いけど今日は、どっちかってぇとお好みでない方とおつきあいいただくことになったかもしれないけど、な。」
「え、いや…その…」
「ローラだってさ、けっこうイイ線いってるぜ。…ただ、モリィ姉に比べたら、…ちょっと、ま、ちっちゃいけど、な。じゃ、行ってくる。」

リックはにやにやしながら、ティムを冷やかして出て行く。…ときどきこうして親友がもじもじするのを、リックは楽しんでいるのだった。





と、いうわけで、ティムはまだ、ステンパー家のリビングにいる。
2時間前と違うのは、眼の前にリックの妹のローラが、にこにことティムを見つめていることだった。



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