かわいい妹さんが、おおきくなっちゃうおはなしを、せるさんからいただきました。ありがとうございます。


【オカルティックなお茶】

さく:せるさん  2006.8.22 /08.24 ver.01公開


「お兄ちゃんっ!」

 仕事から帰る途中、俺は突然来た横からの抱きつき衝撃を受け止めた。多少たじろぎながらも、その抱きついてきた『物体えぇええええええっくすっ!(X)』をしっかりと支えてやる。

 あっ、どうもこんにちは。いや、こんばんは? それともおはよう……とっ、とりあえず、一貫して初めまして。大樹という者です。新参者ですが初めまして――って転校生じゃないんだから、この挨拶はいらんか。

 ごほんっ、失礼しました。大樹、と申すものです。自己紹介は名前だけで十分だな。とりあえず今すべきことは、こいつの対処だな――

「あのさ、お前ももう中三なんだから兄に向かって抱きつくなんてやめろよっ」

「えー、だって恵美はお兄ちゃんが好きなんだもんっ」

 そう言って、甘えんぼう度120%の顔を俺の胴体に押しつけ、より一層抱きしめる力を強くした。

 今、こうやって中三という自立し始める歳にも関わらず、もう二十歳になる俺に抱きついてくるのは、妹の恵美だ。

 外見はロリ、の分類に含まれるであろう。サラサラの肩甲骨の辺りまで伸びた漆黒の髪に、クリッとしたつぶらな瞳。どちらかというと丸顔で、ほっぺがプニプニしている。本人が気にしているので、目の前では言えないが、かなりの幼児体型。引っ込んでるところは引っ込んでるのだが、出るところが出ていない。身長は140程度しかなく、とても華奢な感じがし、見た目、中一程度に見える。顔も童顔だしな。
さしえ。

 もちろん、顔が童顔だの、幼児体型だの、お子チャマだの本人の前ではとても言えないが――」

「言ってるよね〜、お・に・い・ちゃ・ん?」

 ま、ままままずい。いつの間にか口に出していたようだ。ついうっかり――てな感じで誤魔化せたらどんなにいいだろうか。嗚呼、神よ。普段は信仰もへたっくれもあったものじゃありませんが、どうかご加護を――


「恵美キ〜〜ックっっ!!」

「あべしっ!」


 人目をまっっっっったく気にせず、おもいっきしその細い脚を俺に向かって、ひゅるるんっっ! と振り上げてくる恵美。…おいおい、パンティ丸見えだぞ…
 お、おまけに…なにやらかわいげなワンポイント…うぁ、勘弁してくださいよ…‘くまさん’ですかっっ! …もしもし? 中学、三年生、ですよね?


「全く、誰がロリよっ。このメスブタッ!」

 その体型と着ているものにまったくそぐわない、暴言。…それも、思春期の女のコならば、ぜっったいに使わない言葉が、そのかわいらしい口から。…はぁぁぁぁ…

俺は、きっ、と兄らしい凛々しさを発揮しつつ、きっぱりと反論した。

「ロリとは断言してません。メスでもありません。ブタでもないと一応反論させてください。メスとかブタとか、かなり古い文句だから使わないでください。…ね。」

 途端に恵美の顔が首の下から、ひゅ〜ぅ、とオデコまでまっ赤に染まる。…う〜む。アニメではよく見る光景…くるくる変わるコケティッシュな表情…ううむ。ここは、まんがの世界か?

「ううう…うっうるさいっ! そんなことどうでもいいじゃんっ!」

「よくないですよ妹君。流行の最先端であるべき若者がそんなに古くちゃ流行もくそもあったもんじゃありません。ちなみに俺も若者だけど」

 おちゃらけ過ぎたのか、怒った恵美がもう一発『恵美キック』とやらをかましてきたので、俺はそれを素早く、華麗に、的確にかわして見せた。

 恵美キックとやらはとび蹴りだったようで、バランスを崩した恵美がコケた。

「はやぁっ?!」

 なんとも可愛い転び声である。ただし、声だけ、ならな。この恵美の転び方はひっじょーに危険である。なぜなら――

「ふぎゃぁっ?!」

――周りの人を巻き込むからだ。ああ、すいません通行人Aさん。本来なら一言もセリフを言うことなく、無事に家に帰れるはずだったのに……。ナムアミダブツ。

「あたた……ってご、ごめんなさい通行人Aさんっ?!」

 どうやら通行人Aが通り名になってしまった模様。さらにすんません、通行人Aさん……。ナムアミダブツ。
 しかし、一言も話さずに逃げていったところを見ると、本当に通行人Aさんだったようで……。ナムアミダブツ。

「はりゃりゃ、行っちゃった……。って、それはそうと、お兄ちゃんひどいよぉっ?! 大事な妹の蹴りくらい、易々と、もうそれも大バーゲンぐらい安々と受け止めてよっ!」

「妹よ、それは字が違うぞ? 意味も違うぞ? それに蹴りは常人には受け止められんぞ? 分かったか、通行人Aという最も安泰、かつ安全な人を傷つけてしまった憎むべき妹よ」

「ことごとく否定した上に人を憎まないでよぉ〜っ!」

 キレた。

 ま、恵美はいつもこんな感じである。ちなみに…俺も、だ。





「ぶすっ……」

 ぶすっというのはブス、という意味ではなく、怒ってるのだ。紛らわしい妹ですが、どうか宜しく……。まぁ、こんな破天荒な妹、誰も宜しくしてくれないだろうが。

「なんだか今、ものすごくいや〜なこと言われた気がするんですけどぉ〜」

「な、何でもないぞ、うんっ」

「…………」

 ものすごくあやし〜、な感情を込めて俺を見ている妹はさておき、ふと、変な店が見えた。いや、変な店、というのは失礼だけどさ、これはどう見ても――

「変な店だね、お兄ちゃん」

 …ですよね。妹よ、別に求めてもいない代弁をありがとう。

「…………」

 また睨まれた。こういう時、勘が鋭くて困るな。
――っと、それよりこの店は何だろう。どことなくオカルトな雰囲気を醸し出している。
黒や紫などの暗い色を主体としている外壁のせいか、明るい商店街の中でここだけが非常に浮いていた。

 ぶるっと鳥肌が立った。…と、妹がさらっ、と言った。

「行ってみようよ、お兄ちゃん」

「…ま、まじすか?」

「まじもまじ。大まじよ」

 何故そう平気でズカズカと店に向かっていけるのか我が妹よ。俺はそんな娘に育てた覚えはないぞ。…育ててないけど。

 恵美は俺の腕を掴み、無理矢理引っ張りながら一緒に店へと入っていった。



「いらっしゃいませぇ……」

「きゃ――――っ!」

「あ、あのぅ……」

「あ、すいません、うちの妹が……」

 ぺこりと俺は頭を下げ、ちょうど腰の辺りにある妹の頭をつかむと、ぺこ、と下げさせる。
…あんだけノリノリで入ったくせに(しかも俺まで巻き添えで)、何で普通の店員さんにビビッてんだよ、お前は。

 店員さんも慣れているようで、すぐに許してくれた。しかもお茶まで出してくれた。

「すいません」

「いえいえ」

 なんだか、普通の大人な人で良かったな。しかも、内装純和風だし……。床は畳だし、縁側らしきものもあったし。あ、神棚とかもあるんだぁ。わぁ……。……? 何故に外壁をあんなペイントにしてるんだか分からん。

「お兄さんもどうぞ」

「あ、すいません」

 俺にまで茶を出してもらった。む、こりゃあ何か買っていかなあかんな。……なかなか商売上手な店員さんだ。


 あ、茶柱。はぁ……幸せ。


「って、何俺はほのぼのしとんねんっ!」

「ど、どうしたの、お兄ちゃんっ? ここ関東だよ? お兄ちゃんも純関東人だよ? 関西関わってないよっ?」

 ボケ、ときどき突っ込みな妹は置いといて、俺はお茶を丁寧に置き、店員さんに尋ねる。

「ここってどういうお店なんですか? 外装とはかけ離れた感じの店なんでよく分からないんですけど…」

「あ、そ、それはですね――」

 俺の突然のなってない大阪弁と、妹の切れのない突っ込みに気圧され気味だった店員さんが立ち上がった。もちろん、こちらもお茶を置いて。

 ――お茶を置くのは日本人の美徳である。……ごめん、俺嘘ついてます。

「ビバ☆オカルトなのですっ!」

「……ワンモアプリーズ?」

「いや、あの、私日本語話しましたよ? わざわざ英語で言わなくても十分理解出来ますよ?」

 ――日本人、皆突っ込み。……ごめん、俺の周りだけです。

「あ、すいません。続きどうぞ。もう大人しく聞いてるんで。な、恵美?」

「あたしっ? 今のあたしの責任なのっ?」

 ばっちり確実に妹はスルーしてどうぞ、と促す。店員さんは苦笑混じりで話してくれた。

「…たはっはっはっはっはっ…」

 すいません、苦笑どころじゃなかったです――

「…って、店員さんボケないでくださいよっ! 話進まないじゃないっすかっ!」

「あ、ごめんなさい……」


 ごほん、と咳払いをし、改めて話してくれた。

「いいですか、この店の外装をご覧になりましたね? どうでしたか、この店の外装の印象は」

「オカルトチックでした」   素直に恵美が答える。

「ですよね。そして、この部屋の内装。いかが思われます?」

「純和風っ!」   勢いに乗ってまた恵美が答える。

「そうですっ。よって私どもの店は茶葉を売っているのです」

「オカルトはどこいったっ!?」

 俺の突込みを他所に、恵美が純粋にわぁと何故か驚いていた。両手を胸の前で合わせながら…そ、それでいいのか妹よっ。

「で、そちらのお茶がお一人様105円になります」  「は〜いっ!」

「えっ、これ商品だったのっ? てか何気に消費税込みなのっ? てかてか、恵美はそれに何の疑問も持たずに支払っちゃうのっ?!」

「あ、大丈夫、お兄ちゃんの分も払っとくよ」

「そういうことじゃなーいっ!」

「で、オススメの商品は――」  「ふむふむ」

「いや店員さん違っ――てか恵美も買おうとしない〜っ!」

 以上、愉快な仲間達がお送りしました。……おい。




かぁ〜。 かぁ〜。


…ありがち、な展開ですが、夕暮れです。
かの“外装オカルト・内装純和風”な店から戻った大樹・恵美のでこぼこコンビは…

「で、だ。その味噌汁の匂いがしつつ、色がピンク色で、さらに何故か気泡がぽこぽこと湧き出てる怪しい『液体Z』は何なんだ?」

「嫌だなぁ、お兄ちゃん。あの店員さんが薦めてくれたお茶に決まってるじゃない〜」

「いや、お前は本当に進められて買ったのか? しかもその『液体Z』をあくまでもお茶と言い切るのかっ?」

「またまたぁ〜、お兄ちゃんたら突っ込み上手なんだからぁ〜 …こくこく」

「人をお世辞感満々に褒めつつ、そんなもんすするなぁ〜っ!」

 はぁ……今更だけど、俺、前途多難……。

「あ、おいし。お兄ちゃんも飲む?」

「うまいのかそれっ? 死ぬほどうまくても、俺は死んでも飲まん!」

「じゃあ死ぬ?」 キラーン。

「いや待て、ちょっと言い切ったくらいで、しかもお前に関することには何も言ってないし、悪口を言った覚えもないのに包丁を自分の兄に向けるのはどうかと思うぞっ?」

「あはは、冗談だよ〜。そんなことするわけないじゃない〜。あはは〜」

 ちょ〜うける〜とまで言われたが、やっぱり包丁は怖いので突っ込まないでおいた。突っ込み街道ばく進中だった俺がわき道にそれた瞬間でした。その時、歴史が動い――てません。そこまで重要じゃないです。ちょっとどこぞの番組ぱくったのは謝ります。ごめんなさい。

 それにしても……なんか違和感。恵美ってこんなキャラだっけか? ん……? ま、ボケから突込みまで幅広く扱う恵美のことだもんな。きっとこういうキャラもあったんだな。うん。

 ――突然ですが、ここで臨時ニュースです。たった今、先ほどまで黄昏に染まっていた夕日が沈みきり、月が昇り、恵美さんがお布団に入られたという情報が入りました。

 早っ! てか、何この時間短縮っ?! 俺の時間はどうなったっ!?





 はい。意味の分からない短縮術のおかげで朝が来ました。俺のハッピーナイトタイムを返しやがれっ。

 誰がやったのかが分からないので文句のつけようがなく、仕方なく俺はベッドから飛び起きた。ん〜、よく寝てねー。

 さて、今日もダルーイ会社に行きますか……。ん? くんくん。いい匂いだ。これは珍しくあの妹が朝飯という名のゲテモノ料理(匂いだけが一級品)を作ってくれてるのかな? 

 …ばれないように早々に会社に行きますか。そ〜っと、そ〜っと。

 そう考えていた俺の目論みは、くしくも次の瞬間に破られた。

「おっはよーお兄ちゃんっ!」

 ギクギク、ギク――ッ!

「や、やぁお早うマイシスター。今日も大変素晴らしい一日になりそうだね。HaHaHa」

「そーですねー。ってまさかお兄ちゃん、あたしの料理から逃げようとしてたでしょ? そうはいかないんだからっ!」

 ぷんぷん、とどこぞのぶりっ子タレント顔負けの動作をし、俺の襟首を掴んで引きずられた。へ、へるぷみ〜。


「ねぇねぇお兄ちゃん?」

「どうしたい、マイシスター?」

「人の料理を目の前にして一口どころか視界に入れようともしないのはどうかと思うなー」

 あんたはこれを食べろと仰るのですか、妹君よ。こんなグツグツと火をかけていないのに沸騰しているような食い物を食べろと仰るのですかっ? しかもオール緑色。

 ま、食えないことくらいは分かってるらしく(なら出すな)、恵美はお茶をすすった。

「ん〜、おいし」

「って昨日のピンク液体Z〜っ?!」

「せめてZはやめてよ、Zは。一応お茶なんだよ?」

「お前が一応をつけるあたり、これは確実にお茶の域を超えてるんだなっ?!」

「も〜、朝からうるさい。えいっ」

 さくっ。ぷしゅー……。あはは、どうしよう天国のお母ちゃん。視界が真っ赤だよ。額に包丁ぐさりだよ。あはは……。ばたっ。

「って死ねるかこらーっ!」

「おぉ、丈夫丈夫」

「おいっ!」

 俺の体の頑丈さに感心したようにぱちぱちと手を鳴らしていた妹にぱしぃっ! と、背中に鋭い突込みを入れた。うー、と呻いているが絶対気にしてやらん。

 全く、どこに朝っぱらの和やかな雰囲気の中で兄に向かって殺人未遂を起こす妹がいるんだか。今はギャグなノリだったから助かったものの、これがシリアスな展開だったら間違いなく俺は連続快楽殺人犯による犠牲者その一だぞ?


 はぁ、と俺はため息をついて椅子から立ち上がる。

「じゃあ、行ってきます」

 こういうと、いつもなら『はぁ〜い』と気持ち悪いほどの猫なで声で見送りをしてくれるのだが、今日は――

 ぎゅっ。

 何故か腕に抱きつかれた。ふにゅっとした柔らかいものが当たる。

「ねぇねぇ、今日はガッコ創立記念でお休みなの。…お兄ちゃん、アソボウよぉ〜」

 と言うのだ、この不良妹が。いや、普段は真面目な方に分類されるんだけどね。

 ――ん? あれ、今ふにゅってした半球型の物体C(アルファベットは大きさに比例)が俺の腕に当たってるんだよな……? あれ、恵美ってAAカップ未満の超無乳じゃなかったか?

 見てみる。……確かに二つの半球状の物体が俺の腕を包み込んでくれちゃってますなぁ〜。うむ、良い感覚――って違っ。

 そういえば身長も伸びてる気が……。んんん?? 変だぞ? 絶対に変だぞ?
さしえ。


「やぁん…もぉ。お兄ちゃんたらあたしのおっぱい見て、えっちぃ〜」

 恵美のいつもよりも断然に色っぽい猫なで声。間違いなく何かがおかしい……。

「そんなに見たいならさ――」

 がばっと、いつもの恵美じゃありえないほどの力で俺は押し倒された。

「生で…見てみる?」

 ずっきゅーんっ!

 胸を打ちぬかれたどころか傷口が焼かれ、再生不能にされてしまった。
…って違うっ。何してんだ、俺はっ!

「やめんか、この色ボケシスターめっ!」

 恵美を突き飛ばした。きゃっ、という短い悲鳴を上げてトンっと軽く尻餅をついた。

「痛ったぁい〜、もぉ〜」

 上目遣いで、どこまでも俺を誘惑するように言う恵美。

 おかしいおかしいおかしいおかしい。絶対おかしい。

 俺は急に怖くなって、逃げるようにして家を出た。





 会社に着いてからも、俺は朝の出来事が忘れられずにいた。

 何故、恵美はおかしくなってしまったのか。何で急に成長してたのか。何故突然――

 …そうだ。あの店が原因だ――!

 あのオカルトチックな外装のくせに純和風な商売してる(?)あの店が原因なんだ。

 具体的にどういうことが原因なのかは分からない。でも、昨日、あの店のお茶を飲んだ辺りから恵美がおかしくなっている…。

 そう思い始めたらいてもたってもいられず、すぐに会社から飛び出した。

 そう、あの店。あの店の店員を問い詰めれば――



 ――そこに店はなかった。



 ただ、シャッターに『閉店』と書かれた張り紙があっただけで、そこはただの古びた建物だった。


 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 昨日は確かにここにあった。確かにここにあの店が――

 慌てて通りすがりの客に問い詰めたが、ここは何年も店が閉店したままだったそうだ。

 そうだ、場所が間違ってる可能性だってある。あれだけ異質な店だ。適当に誰かに聞けば場所が分かるはず。

 …ダメだった。誰一人知らなかった。客だけではない。商店街の会長にも聞いた。でも、答えは一緒だった。


 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 だとしたらあのお茶は一体――?

 急に恵美のことが心配になり、家へと急いで帰った。





 俺は、目の前に広がる光景が、完全に現実のものとは思えなかった。

 部屋の壁紙は剥がされ、ドアは壊され、テーブルは半分に折れ、椅子は見るも無残な形に変形され、テレビは壁に投げつけられたかのように近くの壁はひび割れていて、テレビは壊れ…………まるで台風か何かが通り過ぎた後のような……いや、それ以上に酷い状態だった。

 誰がこんなことを――まさか強盗……? いや、強盗でもここまでする必要はないはず。なら誰が――

 …恵美は? いかん!

 俺はぐしゃぐしゃになっているリビングを飛び出し、一目散に恵美の部屋へ向かう。
 「Emi(はぁとまぁく)」という可愛らしいネームプレートがぶらさがったドア。ちょうつがいが取れかかっていた。
 (うあ…くそっ! 恵美、だいじょうぶか?!) 走っている勢いで、俺はドアを思い切り蹴り破った。

「――――ッ!?」


 …見てはいけないものが、目の前で…繰り広げられていた。

 あの、どこか抜けてても、純粋で可愛くて、ころころ転がして遊びたくなってしまうような恵美が、全裸で自分の股間に手をまさぐり、とんでもなく艶っぽい声で喘いでいるではないか。

 しかし、その喘いでいるのが恵美だと分かったのは奇跡といっても過言ではないほど…。
何しろ、姿かたちが恵美ではないのである。

腰まで伸びた艶のある長い髪、すっと通った鼻に潤んだ唇。
豊満すぎるほどに発達している胸。これでもかというほどにくびれたウエスト。
小さくなく、それでいて大きすぎるわけでもないお尻。

そしてその美人と一言で言い表すにも抵抗がありそうな女性の出す、透き通った声…。

誰がどう見ても決して恵美には見えなかった。

俺が分かったのは、ここが恵美の部屋だ、ということと、もしかしたら、台風が通り過ぎたようなリビングの惨状は、けさ、いつもとはまったく違った仕草をした、恵美の仕業ではないのか、という思いが頭をよぎったからである。


 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 確かに恵美がこんな状態でいるのもおかしい。だが、それ以上に俺の視力、どうかしてしまったのではないか…。ごしごしごし。思い切り眼を擦ってみるが、目の前の光景はちっとも消えなかった。

恵美が――恵美が大きすぎるのだ。

 何故人が足を曲げててもベッドから飛び出ようか。何故恵美が自分のベットを軋ませるほどの重さを持っていようか。何故――

 遠近感覚がどうかしてしまったのではないかと本気で自分を疑った。だが、何度目を擦ろうが、頭を引っ叩こうがその狂いは一切補正されることはなかった。
さしえ。



 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 こんなことが現実にありうるのか? いや、ありえない。こんなの、ありえるわけが、ない。ありえ、ない――

「あ…あン…あン…あはン…ンン…ン……。…あ……、お兄ちゃん…」

 色っぽい中にも、いつもの恵美のあどけなさが残る声が部屋に響く。

 そうだ。これは幻覚だ。そうだ。ただ俺が疲れてこんな幻覚を見ているだけで、本当は恵美も普通で、家も荒らされてなくて、本当は――

 …だが、この考えはすぐに破られた。

「…んふふ…。…ね…お兄ちゃんも一緒にえっち、しよ?」


 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 何故、何故14歳である恵美がそんなことをしてるのだ? 何故恵美がこんなにも成長しているのか? 何故恵美がこんなにも大きくなっているのか? 何故何故何故何故。

 ところ、が。

 突然、ぐいっと恵美のほうに引き寄せられた。いつの間にか恵美は四つん這いの体勢になっていて、俺の腰に手を回している。

 恵美は俺の腰の半分を覆うような大きな手でぐいぐいと自分の元に引き寄せた。ぐぐぐっと一気に恵美の普通よりも綺麗で、大きい顔が近づいてくる。


 俺の心を満たしたのは恐怖心だった。

 何故人がここまで大きな顔を持っているんだ? 何故こんなにも力が強いんだ? 何故――

 すぐそこまで恵美の顔が近づき、俺はその恵美の大きな唇でキスをされた。

 抵抗できるはずがなかった。恵美の大きな手が俺の後頭部と腰を押さえつけ、恐怖心が俺の力を抜き、恵美の魅力的な唇が俺の唇を覆ったのだ。抵抗できるはずもない。それが本能だった。

 …それはとても深いキスだった。普通の人より、これまた断然大きな舌が俺の唇を割り入ってくる。

 豊満な舌肉が俺の口の中で艶やかに動き、俺の舌に絡めてくる。俺は初めのうちは抵抗していた。が、初めのうちは、である。その内ささやかな抵抗さえ出来なくなった。

 恵美の大きな舌はとても力強く、押し返そうにも出来る気配すらなく、むしろ押し返そうとすることでこちらの舌が弄ばれていた。

 大きな舌が俺の舌に絡めるようにして動く。俺は必死に舌を引っ込めたり、逃げたりして、些細な抵抗を試みていた。
…が、それもすぐに出来なくなり、恵美の舌はより強く、より淫らに俺の舌を絡めとっていく。

 じーんと俺の脳に何か膜が被ったように痺れてきて、何も考えていられなくなってきた。いつの間にか俺のペニスにも血液がどく、どく、と集まり、トランクスを突き破らんばかりに大きくなっていく…。

 口の中、全部を舐め尽くすような勢いで上あごを舌が這いずり、歯茎が優しく突かれ、喉の手前まで舌が入ってくる。


 …長い長い、息をするのも忘れてしまうくらいに情熱的で、深いディープキスだった。
恵美の唇が離れたとき、名残惜しい気さえした。

 それでもやっぱり呼吸しなくてはいけないので、俺は肩を大きく揺らして息をした。


 何故、何故14歳の、しかも不良でもなんでもない恵美がこんな淫らなことを知っているんだ……?

 突然、うふふ、という恵美の艶やかな笑い声が聞こえた。

 恵美の、拡大したような大きな潤んでいる口が三日月形に歪んだ。恵美は片手で掴んでいた俺の腰を離し、四つん這いの体勢だった状態から女の子座りに座り直した。それでも、立っている俺が、その顔を見上げなければいけないほどに大きい…。

 そして…目の前にはすごい光景が広がる。とんでもなくデカイ胸。それが俺の前にあるのだ。
恵美はそれを一切隠そうとなどせず、むしろ堂々と見せているといった様子。

 今の恵美のデカイからだでさえも完全にアンバランスなその胸は、その可愛らしい顔よりもはるかに大きく、当然俺の胴体などはるかに凌駕するボリュームを誇っている。
しかし、にも関わらず先端はツンと上を向き、まったく垂れている様子は見られなかった。むしろ張っている、とでもいったほうがいいだろうか。そんな感じ。

 胸の大きさに比べて乳輪は小さかったが、それでも普通の人より全然大きい。もしかしたら、俺の顔の半分くらいあるかもしれない。

 そして…その乳首。これがかなりデカイ。それはそれは、男の俺でさえ痛そうだな、と思えるほど勃っていて、ひく、ひく、と蠢いている。
…ちょうど、子供のペニスを太くした感じ。しかもそれを拡大したバージョンだ。俺が咥えるとしたら、口の中はそこそこ埋まってしまうくらい。

 ごくりと生唾を飲み込んだ。こんなものを目の前に見せ付けられてしまうと…。
…たとえ妹だろうが、たとえ大きさが異常だろうが、そんなこと、塵ほども問題ではなくなっていた。

 俺は、恵美の、いやらしい人差し指と中指だけの‘手’招きのままに近寄っっていく。
一歩。二歩。三歩。…進むたび、ワイシャツを脱ぎ散らかし、カチャカチャとズボンを脱ぎ、全裸になる。そしてはち切れそうに三角形のテントを張りつめたトランクスを引き千切らんばかりに、俺は、ペニスを解放した。

 自分で言うのもなんだが、俺のブツは大きい。普通の人に比べりゃ断然にデカイ。30センチ以上はあるだろうか。正確に測ったりすることなどないので、それ以上は分からない。
…が、そんな俺のブツも恵美を前にしたらとても小さなもののように思えてきた。

 それほどまでに、恵美のマンコの大きさはすごかった。俺の頭を飲み込んでしまいそうなほど大きい。
しかし、その大人びたグラマラスなボディとは対照的に、茂みはほぼ皆無。そこだけは恵美の年齢を語っているようだった。


 俺は恵美の前に立ち尽くす。…ごくり。おもわず唾を飲み込んでしまう。

やっぱり恵美の胸はデカイ。近くに来たら、もっとデカく感じられる。
片胸の大きさを見るだけでも、これを二つに…いや五つか六つに分けて人の胸にしたとして、それでもDカップくらいいくんじゃないだろうか、というくらいデカイ。

…何故か、でかいヒグマが乗れるバランスボール、というイメージが頭の中に思い浮かぶ。


 その恵美のデカ過ぎる胸に俺が見とれていると、うふふ、と恵美の色っぽい微笑の声が聞こえた。

「…あたしの、おっきすぎる、おっぱい…。お兄ちゃんの、好きにしていいわよ…」

 さぁどうぞ、と言わんばかりに恵美は自分の胸を持ち上げる。

ぶるん、ぶるるるんっ! と揺れたかと思うと、恵美のデカイ手の平の上に乗っかるようにしてやや持ち上がった。
が、恵美の手でも片手でその片方を全部持ち上げることが出来ないようで、手の左右からこぼれるようにして肌色の塊がたれている。
おまけに、もう一方の膨らみは、軽く持ち上げた脚にずっしりとのし掛かり、これまた太ももに当たって、まるで、つきたての餅を乗せたように、柔らかい塊がいやらしい形にゆがんでいる…
それがいっそう、色っぽさを引き立てている…。

 俺は恵美の右胸に手を伸ばした。ちょっと触れるのを躊躇われるくらいに綺麗な肌だった。
その巨大さにもかかわらず、キメが細かくて、シミなど一つもない。しかも青白いというわけでもなく、健康的な肌だった。

 …触れる。が、それはほとんど溶けるのと同じようにして俺が押すたびにどんどん沈んだ。
胸がいやらしく変形する。柔らかい。そして弾力がある。溶けるように沈むのだが、それでもどこか張りを感じた、不思議な胸だった。

押して戻す。そしてまた押す。戻す…。

それを何度か繰り返していると、頭の上から、恵美の喘ぎ声が聞こえてくる。

「あん…ん…ん…んふ……っ。い…いいわよ……お兄ちゃん…」

 見ると、快感に浸り、上気している恵美の顔があった。
それをいつもの恵美だと思おうとしても、とてもそんなことは無理だった。
俺が認識できるのは、恵美と言う名の、とんでもなくエロくて、ものすごくデカイ女、ということだけだ。

 …そして、俺はその、ありえない巨大なボディに、凄まじいほどの興奮を感じている…

 今度は乳輪を撫でるようにして触れる。俺の手と同じくらいの大きさだ。周りからどんどん責めていき、焦らすようにして少しずつ乳首に近づけていく。
たまに力を強めにして撫でると、恵美の胸がぷるんっと揺れた。
「あ…あぅぅんんっ!」

 ぶるっ、ぶるっ、と全身が震え、それに合わせ、豊満すぎる肌色のバランスボールが大きく波打った。
…軽く達したようだ。どれだけ敏感なんだ、この胸は……。

 ゆっくりと焦らしていくたびに、乳首がまた大きくなっていく。乳輪も張ってきて、ちょっとぷっくりと盛り上がり始めている。

 俺は両手をフルに使って、恵美のとんでもなくデカイ胸を揉みしだいた。
 時に力強く、時にほとんど触れるだけのように強弱、緩急をつけていく。

 やっぱりとんでもなくデカイ。…柔らかすぎる膨らみは、片方だけでも掴みきれない…
そしてなんという触り心地なのだろう…最高だ。この弾力は、絶対に人工などでは作れないだろう。

 俺は無我夢中で揉んだ。揉むたびに胸はいやらしく変形し、恵美が小さくはねる。その体重のせいからか、ちょっと身体が震えるだけで、どすん、どすん、と大きい音がした。

 すごい……

揉んでいるだけなのに、俺のブツはどんどん逞しくなり、興奮の度合いが高まっていく――何故かフェラチオされてるような感覚になってくる。
胸を揉めば揉むほど俺のブツにも刺激が加わるような感覚で、気持ちよすぎてほとんど何も考えられない。俺も達しそうだ。

「…ん…あン…。…んふっ……すごい、でしょ……」

 恵美は、いつのまにか俺の揉んでいないほうの胸を自分で揉んでいて、その乳首を弄りながら言った。

「お兄ちゃん、あたしね……今、すごい力を持ってるの…」

 すごい、力……?

「うん、すごい力」

 俺は、恵美の胸を揉むことを止め、話に聞き入る。

「私が気持ちよくなるとね、みんなが気持ちよくなるのよ。…ほら、窓の外見れば分かるよ…」

 俺は言われたとおり、部屋の窓を開け、外を見てみた。

 …これは…。目の前にあるのは、これまた、すごい光景だった。

 外には何人かの人がいたのだが、誰もが自身のブツでオナッてたり、胸やマンコを弄ってたりしているのだ。

 これには愕然とした。…が、妙に納得がいく。
…だから俺が恵美の胸を揉んでいると、俺まで達しそうになったのか……。

「…それでね、みんながエクスタシーに達するたびに、あたしも達するのよ……ほら、あそこの女の人見てて……」

 俺は、恵美の指差した女性を見やる。その女性は自分の股間に手をやり、何度もヴァギナに突っ込んでは抜くの繰り返しをしていた。が、次の瞬間――ビクンッと腰がはね、その場に突っ伏した。いってしまったのだろう。

 それを俺が見届けたと同時に、

「あぁああああんっ!!」

 恵美がとんでもなくデカイ喘ぎ声と共に、腰を大きく浮かし、潮を吹いた。
 ぷしゅ、ぷっしゃぁあぁぁ! 

 …窓際にいた俺は、透明な、すこし粘りけのあるシャワーを全身に浴びる。
 なぜか、それも俺の興奮を高めていく…

 そうか…恵美の言うことは本当らしい……。

「なぁ、恵美……」
「な、なぁに……?」

 恵美は、まだその快楽に酔いしれているように肩で息をしながら言った。

「他の人がイクとそうなることは分かった。で、お前自身がイッた場合はどうなるんだ?」

「それはね…」

 恵美のぷるんとした大きな唇が言葉をつむぎだす。

「んふふ…あたしがイクと、みんなもイクの。……普段の3倍くらいの快楽と共にね」
「そ、そうなのか……?」 恵美の言葉に、俺のブツが、びくんっ! と反応する。

 3倍……。数字では分かるが、実際、どのくらいのものなんだろうか、とてもじゃないが想像がつかない。
俺だって、それなりにセックスの経験はある。第一、その絶頂の快感を1倍としているわけで、それだってかなりのものがある。
だから、普通にしてたら3倍なんて味わえるわけがないのだ。

いったい、どんなことが待っているのか…想像を遙かに超えた状況に、頭がくらくらした…

「…うふン…お兄ちゃん、試してみる?」

 俺の心を読み取ったようにして、恵美が言った。ああ、その通りだ。試してみたいとも。

「…じゃあ、あたしをイカしてね……」

 うふふ、と笑うと共に、恵美は俺に手招きをした。まるで、小さな子供を呼ぶように。

そうだ。恵美からしてみれば、俺なんて子供並みに小さいんだ。この大きさを見れば分かる。
「恵美が大きい」んじゃなくて、「俺が小さい」のではないか…そんな錯覚までしてくるデカさだ。

 恵美は、その長い長い両脚の間に俺が来たのを確認すると、その場に寝転がり、大きく股を広げ、俺に見せ付けるようにして割れ目を開く。
するとそこは、ものすごい量の愛液が溢れ出してきていた…。

 ちゅぷ…ちゅぷ…という音を出しながら、滴るようにして漏れている。
それを見た俺は、磁石に吸い寄せられるように恵美のマンコにしゃぶりついていた。

 小陰唇を舐め、クリを突き、口に咥える。…やっぱりこれもデカイ。
デカイデカイ言っているが、本当にデカイのだから仕方がない。
その大きなクリを精一杯舌で転がすようにして弄ぶ。

「…あぁ…あぁああんっ…そ、そうよっ、そうよ…た、た…大樹ぃ〜っ…もっと……もっと強くぅ〜ッ!…あん、あン…あぁんんんっ!」

 興奮した恵美。もう俺のことを呼び捨てにしていた…。
 今の俺は、そのどデカイボディを揺する恵美にとっては保育園児以下だろう…まるでおもちゃをいじるみたいに、俺の後頭部をその巨大な手で押さえつけ、熱く火照る肉襞に擦り立てていく。

 俺は無我夢中でしゃぶる。愛液で顔がびしょびしょだが、そんなことはどーでもいい。
思いっきりクリを舐め、乳首にするようにちゅうちゅうと激しくしゃぶりたててやる。

その刺激を受けて、ぷっくりと膨らんだ肉珠は、ひくひくと震え、その下の大きな割れ目からはこんこんと愛液が沸き立ってくる。
俺の舌の動きはさらに激しくなり、気が付くと、ひくつく肉襞の間に両手をつき入れ、力の限り掻き回していた…

と、その刹那、恵美の腰が大きく浮きあがる。…かと思うと、今度は俺の頭の中でスパークが起きた。


 バチバチイィッと頭の中で何かが弾けるようにして電気のようなものが流れ、同時に頭の中が真っ白になっていく。

 ふわぁ……何だ、これ……。

何だか身体が宙に浮いたような感じで、とっても気持ちがいい。そして、全身に震えが走ったあとの、この余韻。…俺は、ものすごい快感に…意識が…。


 気が付くと、俺はしっとりとした人肌のぬくもりの上にうつ伏せになっていた。
…たぶん、俺の頭の上に恵美のはちきれそうなクリがあり、俺の身体の下には、濡れたビロードのような襞々が。
俺は…恵美の途方もない大きさのマンコにもたれかかっているのだ。
愛液の水溜りに顔を突っ込んでるが、もう身体が動けないくらいに気持ちがいい……。





「すごいでしょ、大樹……」

 はるか頭上から、恵美の声が聞こえてきた。でも、俺は気持ちよすぎて頷くことしかできない。

「これはね…大樹、女の子のエクスタシーなのよ」

 ああ、そうか……。女の子の。

そういえば、女は、男の3倍の性感があるとか聞いたことがあった……。女の感じ方って、こんなに気持ちがいいのか……。


「うふふ……とってもいやらしい顔してるわよ、大樹……。相当女の子の感じ方が気に入っちゃったみたいね」

 そうだな……。これはすごい。とてもじゃないが男の比じゃない。SEXのたびにこんなに気持ちよくなれるんだったら、毎日でもしていいかもな……。


「そう…じゃあ、叶えてあげるわ。ふふふ……」

 恵美がそう笑った刹那、急に身体が熱くなってきた。燃えるように熱い。まるで骨が砕けるようにバキバキと音を立て、身体がむずがゆくなってくる。

「な、何が……?」

 そう聞くので精一杯だった。声の調子もどこかおかしい。声を出すたびに喉が潰れるように痛く、そのせいか裏声を使ったように声が高い。


「ぐうぉおおっ!!」

 痛い痛い痛い痛い――ッ!

 身を守るようにして膝を抱え込んだ。が、そこでやっと気が付いた。俺の胸に、妙に柔らかいものがくっついているのだ。

 何だ、これは……?

 が、その疑問が解決する前に新たな疑問が頭に浮かぶ。妙に股間に喪失感があるのだ。…あるべきものがないような、どこかに落としてしまったような、そんな感じ。

 痛みのようやく治まってきた。ので、俺は、弱いがまだ続く痛みに耐えながら、その場に座りこんだ。

…気が付くと、座り方は、自然と女の子座りになっていた。

 な、なんじゃこりゃぁあああああああっ!? いや、太陽にほえたとかそんなんじゃなくて、本当に。

 ふよん。ふよん。…ふくよかな、胸の感触。 
…何で俺に胸があるんだよっ!? 

 股間に手をやると、そそり立つ自慢のブツの代わりに、にゅる、にゅる、つるん、とした柔らかな、割れ目が。
…何で俺のペニスがなくなって、代わりにマンコがあるんだよっ!? 

 さら、さら…頬にかかる、つやつやした感触。
…何で髪が長くなってるんだよっ!?


「何、で…………?」

 声も高くなっていた。まるで鈴のような、可愛い声。まるで女……。そう、女っ!


「んふ…。そう、大樹を女の子にしてあげたの」


 俺の心の疑問に答えるようにして、笑みを浮かべた恵美が言った。

 その顔がとんでもなくいやらしい。目がいやらしく笑い、唇がいやらしく歪んでいる。
何故かその様子に俺は恐怖した。


 俺は、後ずさった。しかし。
足は笑っていて動かず、手だけで無理矢理身体を引っ張る。が、その手になにやらぬちゃっとした液体が触れた。白い、とろとろとした液体だった。

 精液。そう、たぶんだが、俺が達したときに出たものなんだろう。床一面に、ぷるんぷるんした、ゼリーのようなものが飛び散っていた…とんでもない量だ。こんな量、今まで一度も出したことがない。

 が、その液体を精液だと認識すると、何故だか無性にそれが愛おしいものに見えてきた。…しかも、あの栗の花のような匂いが強烈に鼻孔をくすぐってくる…

ああ…床にこぼれてるなんて勿体ない…。それなら舐めちゃえ…。


「ね、大樹…大樹はね…」

 と、恵美が唇に舌を這わせながら、囁きかけてくる。

「もう、すっかり女の子なの。それもとっても淫乱な。精液が大好物で、おちんちんをしゃぶるのも大好き。でも、女の子のおまんこも好きで、大きなおっぱいをしゃぶるのが好きな、バイな変態女の子……」

 うふふふふ…。いやらしく恵美が笑っている。

 俺が、淫乱なバイ……? 男も、女も好きな、変態……。

ああ…えぇ…そう。そうなの。私はとってもエッチな女の子…。
おちんちんも好きだし、でもおまんこも好きなの。どっちも大好き。
精液も、愛液も、こんなにこぼしてるなんて、勿体ないわ。舐めなくちゃ。

 そうして私は、床にこぼれている精液を舐め始めた。

んぅ、とってもおいしい。精液は、ほっとくとガビガビになっちゃうからね。早く舐めなくちゃっ。


「ふふ…いやらしい娘ね、大樹ったら…。…そんなに精液が好きなの?」 

 その、いやらしく、ぶりゅんぶりゅん、って揺れてる、おっきな、おっきなおっぱい越しに、背筋がしびれるような艶のある声が、私の耳を嬲ってくる…。
 んもう、恵美のいじわる。そんなこと、恵美が一番よく知ってるはずなのにぃ。いいもん、私は言葉責めも好きだもん。

 私は、その淫靡な問いかけに、こくん、と頷いた。
そしたら、やっぱり恵美がいやらしい娘って言ってくる。いいわぁ、それだけで私のおまんこ、ジュジュンって、濡れてくる……。
それに、なんだか切なくなってきちゃった……。精液、勿体ないけど、でも恵美に責任とって貰わなくちゃっ。

 私は精液を舐めるのをやめて、恵美の目の前に行った。そして、恵美のとっても大きな身体に抱きつく。んんぅ、やっぱり恵美のおっぱいは大きくて柔らかい……。片方だけでも、私の腕なんかじゃ半分も届かない。


「え…恵美ぃ…、私のおまんこ…こんなに濡れちゃったわ。責任…取ってよね?」

 と、私は見せ付けるようにおまんこを開く。するとちょっぴり愛液が漏れてきた。んぅ、勿体ないけど、自分のは舐めたくないしなぁ……。
恵美が舐めてくれればいいんだけど、恵美はそこまで好きじゃないし……。ああん…勿体ない……。

 私は恵美の顔を見上げる。うん、おっきくて可愛らしい。
……そういえば、おっきくて可愛い、ってちょっと変よね。普通、ちっちゃくて可愛いとかだけど……でも、本当に恵美は可愛いんだもん。仕方ないよねっ。

 恵美はにっこり笑い、私のほっそりとしたウエストを片手で優しくつかむと、軽々と持ち上げる。
あ、キスしてくれるんだぁ。嬉しいな。恵美のキス、とっても情熱的で大好きなの。

 そして唇を重ね…。が、それはすぐに離されてしまった。

「あ…ああん…もう? …な、なんでよぉっ?」

 ちょっと怒りながら、私は恵美の手の中でいやいやをして文句をいう。

 それに対して恵美は、

「キスはさっきしたからいいでしょ? それよりも、あたし…大樹の膣に挿入れたいな〜」

 んぅ、もう。恵美ったらムード、とか、きぶんを高める、とか、順番ってものを考えないんだから……。でも、いっか。私は、こくん、と頷きかける。

 すると、それを認めた恵美が、私を一旦地面に降ろし、寝転がった。
その勢いに耐え切れなくなって、ばきばきばきっ! と音を立ててベッドが潰れてしまった。
ぺっちゃんこになったベッドの破片(?)は、カーペットに食い込み、ぎし、ぎし、って床がきしんでる。
私はちょうど恵美のお股の間に立っていた。

…うわぁ…。寝てもすごい迫力。特にそのおっぱい。寝たら、普通潰れたりするんだけど、恵美の場合は別。すんごいボリュームなの。とっても、とぉってもね。
だって、今いる私のところから、彼女の顔が見えなくなっちゃってるもの。胸板から乳首のてっぺんまで、1メートルはあると思う…それが、ぷるん、ぷるん、って揺れてるの。うふふ、さすが恵美。ちょっと羨ましい。

 大きな大きな掌が私の背中を優しく押して、私は、誘われるように仰向けに寝転がっている恵美の上に乗っかる。
ちょっと重いかなって心配したけど、私の体重くらい、恵美からしてみれば全然気にならないみたい。私は恵美の右のおっぱいに近寄っていく。

 やっぱり恵美のおっぱいはすごい。私の目の前に立ちはだかる、肌色のまぁるいふたつの小山。その間から、頬を上気させ、いやらしく微笑む恵美の顔が見えた。
私の身体ほどもあるおっぱいの上に突き立つ乳首…その大きさといったら。まるで男の子のおちんちんみたい。形的には違うけど、15センチくらいはある。それだけでも十分に大きいし、それに…すごく太い。
それが、ぴく、ぴく、って震えてるのは、恵美も興奮してる証拠。
ああ、これが今から私の膣に挿入るんだ……。考えただけでも濡れてくる……。

 いくわよ、と私が言うと、恵美はその大きなおっぱいを揺らして頷いた。私は右のおっぱいの上によじ登ると、その乳首の上に膝を立て、ゆっくりとそこに私のおまんこを導いた。

 恵美も、自分のおっぱいを掴み、動かして私の膣を捜してる。私もその位置を知らせて、なんとか場所が分かった。そして…くちゅ、と音がして、私の中にその太いモノが挿入ってきた。

「あぁあんっ!」  …私の蜜壺が、一杯に満たされていく。

 すごい……すごいわぁ、やっぱり恵美は……。男の子のよりは硬くないけど、熱くて、太くて、動きもすごい……。私の股の下でおっぱいがいやらしくうごめき、その動きに合わせて私の膣内をかきまわす。あぁ、だめぇ……おかしくなっちゃいそう……。

 私も一生懸命腰を動かすけど、ほとんど恵美のおっぱいの動きに揺さぶられるような形になっちゃって、ちょっと油断すると振り落とされそうになる。
そのため、私は一生懸命締めつける。あぁ、すごい……恵美の乳首を感じる……。きゅうって締めれば締めるほど、恵美の乳首の形がはっきり分かる。

 あぁ、本当にすごい…すごいわぁ……。

挿入れられてるのも気持ちいいし、恵美の挿入れてる快感も伝わってきて、これも気持ちいぃ……。

あぁ…だめぇ、頭の中がじーんとしてきて何も考えられない……。もっと気持ちよくしてぇ……。

 すると、恵美は両手でおっぱいを掴むと、もにゅもにゅと上下に揺すり、ぐるぐると乳首の先で円を描く。私が乳首を締め付けて落っこちないことを確認すると、そのペースはどんどん速くなっていった。

 あんっ……そう、もっと強く…………んんん〜っ、あぅんっ……はぁ……もぅだめかもぉ……。くふっ……ひゃんっ……!

 あぁもうだめぇ……立ってるなんて、もぅ無理よぉ……気持ちよすぎて腰が…腰が動かない……脚から力が抜けてくぅ……。

 そんな私の気持ちが伝わったのか、恵美が片手をおっぱいから放すと私の腰を持ち、動かしてくれる。強く、激しく。その動きに合わせ、もう一方の手で恵美はおっぱいをぶるん、ぶるんと揺らすのを忘れない。
ああ…その感覚もすごく、気持ちがいい。与えてる側としても、受けてる側としても。

 あっ……んん……ふ……ん……あン…あン…ああぁ…ああっ…イ、イキそ……、ん、あっ…い、イクぅ、イ…っくぅ…イクぅうううぅううううっっっっっ!!

 バチバチッと頭の中を電気が駆け巡り、視界がホワイトアウトする。

恵美…って……すごいわぁ…………。

そう、薄れていく意識の中で私は思っていた…………






「恵美ぃ、遅いよぉっ!」

「ごめん、大樹。あとちょっと……」

 もう、恵美ったら、普段はとろいんだからぁ……。早くしなくちゃ学校に遅刻しちゃうじゃないっ。

「お待たせっ」  ひょん、っと私の横に着地して、恵美が言う。ぽよん、ぽよん、って、胸元が大きく揺れる。

「まったくもう……。さ、早く行こっ」

 そう言って、恵美の、私よりもちょっと大きな手を握り、走り出した。恵美はちょっとけつまずきながらもついてきてくれる。…もたつくのは、やっぱり、あのおっきな、おっぱいのせいかな?

 恵美は普段、私よりお姉さんな感じの双子の妹だ。私よりも背が高くて165センチだったかな。私よりもおっぱいが大きくてEカップ。私よりも脚が長くて……く、悔しくなんかないもんっ。

 それに比べて私は150センチくらいしか身長がなくて、おっぱいもまだBカップ。脚は、恵美は身体の半分くらいもある長い脚なのに、私はそんなに……。絶対不公平だよおっ!

 そんな恵美は、エッチの時にだけ、ぐんぐんおっきくなってくれる。けど、普段はこのくらい。でもでも、いっつも私のほうが妹扱いされてて…悔し――くわないわよっ?

 さて、今日も元気に学校だ――



 おわり。





セルさんのこの作品へのごいけん、ごかんそうなど、なにかありましたら…
WarzWars(アットマークはただしく直して…)まで、おしらせください。


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