おおきなひと−10。せつめいつき。



天井がぎしぎしときしんでいる。(2階でまた大騒ぎしてるな…) ため息をついて、階段を上がると、妹の絵美のドアをノックする。

「おい! いつも言ってるだろ? 静かにしろよな!」 …返事がない。

いやに静かだが、ぎし、ぎし、という軋みはいつまでも続いていた。ときどき、はあ、はあ、といったため息のようなものが聞こえる。

「絵美? 気分でも悪いのか? …入るぞ?」

言うなりドアを開ける。....一瞬、自分の見たものが信じられなかった。
ぼくの視界に飛び込んできたのは、8畳の部屋いっぱいに横たわる、絵美のヌードだった。

「いや....お..おにいちゃん....見ないで...」

絵美の背丈は、もう5メートル以上はあるだろう。頭が天井にまで届くほど大きくなっていて、まだ少しずつ巨大化していた。
身体を支える右手が壁にめり込んでいき、頭が天井を押し上げていく。下で聞こえた軋む音はこのせいだったのだ。

ふと見ると、乱暴に脱ぎ捨てられた服や下着がベッドのそばに落ちていた。大きくなりはじめたので、あわてて脱いだのだろう。それでも間に合わなかったのか、あちこちに裂け目ができていた。

ばんっ! と音がして、洋服ダンスを押していた右足が、扉の下の方を押しつぶす。

成長するのは大きく飛び出したオッパイのほうが速いのか、見ているぼくの目の前で、少しずつ大きくなっていくのがわかる。
巨大な房は、いま片方だけでも直径で1.5メートル以上はあるはずだ。
その先は、30センチ以上、ぼくの顔がかんたんに隠れそうだ。まあるく膨らんだピンクのお皿の先端に、ちょこんと乳首が乗っかっている。でっかいオッパイに比べれば小さいが、それでもぼくの親指ほどもある。

オッパイや身体の重みで、床が歪みはじめていた。…このままだと、部屋どころか、家が潰れてしまう…。

なにもできないまま、ぼくは、絵美がどんどん大きくなっていくのを、ぼうぜんと見つめていた。

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